Harry Potter  ビル

□ハロウィーン
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「私がトロールを探しに来たんです。
 私…私1人でやっつけられると思いました。
 本で読んでトロールについてはいろんなことを知っていたので」

あの優等生のハーマイオニーが真っ赤な嘘をついている姿に
ハリーとロンは信じられないものを見るような目をしていた。

「もし、3人が見つけてくれなければ私は死んでました。
 ハリーとロンが最初に私を見つけてくれて、
 ハリーは瓦礫を投げたり音を立てたりしてトロールに気を引いてくれました。
 今度は姉のクラルスが駆けつけてくれて、
 ハリーに振りかざした棍棒を呪文で防いでくれて、
 ロンがその棍棒を奪い取って、
 姉が失神呪文でトロールを倒してくれました。
 誰かを呼びに行く時間なんてとてもなかったんです。
 私、もう、殺される寸前で……」

クラルスはとても歯がゆい思いだった。
怖い思いをした妹が庇ってくれている事実に。
姉として情けない、と……。

「そういうことでしたら……
 Ms.グレンジャー、グリフィンドールから五点減点です。
 お姉さんと一緒に期待をしていたのに、貴方には失望しました。
 怪我がないのならグリフィンドール寮に帰った方が良いでしょう。
 生徒たちが、さっき中断したパーティーの続きをやっています」

ハーマイオニーが言う通りに帰るのをクラルスは追いかけようとしたが、
マクゴナガルに呼びとめられてその場に留まった。
今度はハリーとロンに向き合った。

「先ほども言いましたが、貴方たちは運が良かった。
 でも大人の野生トロールと対決できる1年生はそうざらにいません。
 1人五点ずつあげましょう。
 ダンブルドア先生にご報告しておきます。
 帰ってよろしい。」

2人はマクゴナガルの言葉に急いで寮に戻っていった。
残るはクラルスだった。
先生方の視線はクラルスに向いた。

「……さて、説明をお願いしますね。
 もちろん真実をです」

クラルスは悩んだ。妹が身を挺してついてくれた嘘を貫くか、
マクゴナガルに従って真実を話すべきか…真実といっても、
なぜハーマイオニーが女子トイレにいたのかその理由はクラルスにもわからないが。
今まで口を閉じたままだったスネイプが初めて口を開いた。

ス「……Ms.グレンジャー、お前の妹が嘘をついているのは
 見ていればわかる。」

マ「スネイプ先生の言う通りです。でも、安心なさい。
 今、真実を聞いたとしても、また減点することはありませんよ」

ク「そ、そ、そうです。た、た、ただ真実が、し、知りたいの、です」

先生方にここまで言われてしまえば、仕方ない。
クラルスはこうなった経緯を知っている限りすべてを話した。

『……、私が話せるのはこれだけです。
 本当に妹がなぜトロールと対峙することになったのかは
 私自身も知りたいことなのです』

マ「……そうでしたか、
 それにしても盾と失神呪文を使えるとは、
 優秀だと思っていましたが、想像以上です」

ス「一体、誰から習ったのかね?」

『習ってはいません、ただ知識としては持っていました。
 これに関しては、ぶっつけ本番で使った私の無謀さに
 問題があり落ち度でもあります』

ク「で、で、ですが、結果としては、せ、成功したので、すから」

『……ただの、結果論です』

難しい表情を浮かべるクラルスとは裏腹に、
マクゴナガルは優しい表情を、スネイプは呆れた表情を、
クィレルは相変わらずオドオドしていた。

マ「Ms.グレンジャー、
 貴女は妹が危険な状況になっているのを見て
 無我夢中だったのです。そんな中でも、
 貴女は呪文を正しく使い分け対処できた……
 3年生とは思えない素晴らしい判断です。
 そうですね、スネイプ先生?」

ス「……確かに、
 両方ともけっして簡単な呪文ではない、
 たとえ練習をしていても不完全に終わる可能性がある。
 あの状況で成功させたことは褒めてやろう。
 妹の嘘がなければ加点をしていたが、
 今回は姉妹の連帯責任として加点はなしだ」

ク「さ、さ、さあ、疲れたでしょう、貴女も、り、り、寮に戻って
 や、休んでください。貴女のか、帰りを、ま、待ってる人が
 いるはず、で、です」

クラルスは先生からの思いがけない言葉の数々に
驚きを隠せない。
教師からの信頼が厚いクラルスだからこそ、の待遇だった。
加点減点はなかったものの、
あのスネイプでさえ褒め言葉を口にしたのだから、
悪い気持ちはしなかった。

クラルスは3人の先生に深く頭を下げて、
グリフィンドール寮に戻っていった。


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