お題

□金浦
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天気予報、ちゃんと見とくべきやったな・・・
熊丘金太は、そう思いながら空を見た。
突然降り出した雨。
周りの生徒は、皆傘を持っているところを見ると、天気予報ではちゃんと発表されていたらしい。
これでは帰れない・・・。
溜息をつきながら、走って帰ろうとした時、後ろから声をかけられた。
「キンちゃん」
「・・・!!亀の字か」
そこに立っていたのは、同じクラスの亀沢浦也だった。
「風邪引くよ」
心の中を見たかのように呟くと、浦也は傘を広げた。
そして、優しく微笑んで金太の腕を引いた。
「行こ

一人用の傘は、2人で入るにはやはり狭くて、2人はできるだけ体を寄せあった。
「すまんな、亀の字」
「いいって。・・・恋人なんだしさ・・・」
最後の方は、声が小さくなって行ったが、金太には、しっかり聞こえていた。
照れくさいような、嬉しいような気持ちになって、思わず微笑む。
それからは他愛のない話をして、金太の家まで向かった。
家に着くと、少しだけ寂しくなった。
「次は忘れないでね」
「おう、すまんな、助かったわ」
「ねぇ・・・お礼、貰ってもいい?」
「お礼?」
なにか上げられるものを持っていたか・・・?
頭の中で考えていると、口を塞がれた。
思考が停止する。
一瞬だけの短いキスだった。
「じゃあね」
振り向き走り出した、浦也の耳は真っ赤だった。
「あー・・・無理やわぁ・・・」
同じく真っ赤な顔を隠しながら、金太はうずくまった。

END
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