if story

□Hey There Delilah
1ページ/3ページ

作戦から外され置いていかれたガイアはその日から周りの助言に従ってどんどん女の人になった。スカートを履いた普通の「女の人」。話し方や仕草も女性的にして、ピークやガビと仲良くなった。
ガビにはいつもライナーの話をしてくれとせがまれたが、「鎧の巨人を継承したライナーは残虐なエルディア人たちの住む国に潜入して野蛮で残虐なエルディア人の殲滅のために今日も頑張っているよ」としか言えなかった。そんな僕をピークは呆れたような目で見ていたが、ガビの夢を壊してはいけない。そうだ。ライナーも頑張っているんだ。僕も、いや…私も頑張らないと。

彼らのチームが旅立ってからから5年が経ったある日。ついにライナー達潜入組が帰ってくるらしい。

英雄の凱旋だ!とはしゃぐガビに賛同したが、そもそもライナーは無事に帰って来られるのだろうか。エルディア人にひどいことをされてやしないか。五体満足か。そもそも野生の巨人に食べられてしまってはいないか。募る不安で仕事中も鉛筆を持つ手が震えた。無事で、とにかく帰ってきてほしい。

門が開場した。ついに帰国だ。アニは、ベルトルトは、マルセルは、そしてライナーは?
そこに立っていたのはライナーと知らない女の人だけだった。

巨人の能力をいくつも失ったことを非難され、子細な活動を知らない人に無意味に崇拝され、それでもライナーは立っているようだった。見知らぬ土地で5年を共にした仲間を失った悲しみや、崇拝されればされるほど思い出される己の非力さも、全て飲み込んで。
その日の夜遅く、ライナーが私の診療所を訪ねてきた。ピークに場所を聞いたらしい。快く迎え入れた私のスカート姿に、ライナーも驚いたようだった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ