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□焦がれる
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きっと、最初で最後なんだろうな。
ベッドに腰掛ける彼の隣に座り、手を重ね指を絡ませた。ゆっくりと近づく距離に思わず顔を背けると怪訝な表情をこちらに向ける。ホテルの薄暗い照明に照らされた濱家さんは色っぽくていつもより格好良い。ううん、いつも格好良いけど。
触れた手と見つめ合う瞳。
あの濱家さんが、今私の目の前にいる。
「あの…本当に良いんですか?」
「何が?」
「私なんかと、その…」
「あー、それほんま聞き飽きたわ。何回言うねん?」
でも、だって…、そう言いかけるけどその度にこちらを軽く睨む彼に何も言えなくなる。
だってそうでしょう?一方的に知ってはいたけれどまさか彼と、こんなこと。
やっぱり、まだ夢のようで。
「大丈夫ですか?初対面の女と、こんな…」
「何が?」
「写真とか…、撮られたらどうするんですか?」
「くふふ、なにそれ。もしかして俺脅されてんの?」
色々な感情がぐちゃぐちゃでこちらはいっぱいいっぱいなのに、飄々としてる濱家さん。
リスクが大きいのはそちらのほうなのにその余裕はどこからくるのだろう?
「指、細いよな」
そう言われ掴まれた右手の薬指。柔く揉むように触れられたそこは少しくすぐったい。
「指だけやないか。線が、全部細い」
「っ…、」
背中から腰のラインをゆっくりと撫でられた。漏れそうになる声に口元を手で押さえる私を見てクスクス笑う濱家さんに恥ずかしくなる。
首元に顔を埋め柔く噛み付いた。少し痛みが走るそこに熱が篭る。目が合うとまた指を絡める。
「次、いつ会う?」
「へ?」
「俺と、また会いたい?」
絡めた薬指にキスをして上目遣いでこちらを見る濱家さん。真っ直ぐにこちらを見る瞳。こんな状況で断る人間なんているのだろうか。
「…、はい」
顔を近づけ、見つめ合う。息も当たりそうなほどの距離で返事をした。
じゃあ内緒な。そう言って口元に人差し指を添える。嬉しそうに笑う濱家さんは年上なのに子どもみたいで可愛くて。
大きな手に触れるだけで胸の奥が痛くなる。体温を感じないその手、でも確かに触れている。
「おいで」
横になる彼の腕の中で抱きしめられる。緊張で少し強張る私の頬に触れ髪を撫でる濱家さん。彼に触れられた箇所全てが熱くなる。
震える手で濱家さんの腕を引くと、少し微笑んで優しくキスしてくれた。
焦がれる
(それは、ひどく甘い)