BOOKその1


□無関心
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Tzuyu side

誰かと共に生きていく自分が想像できなかった。



昔から1人でいることが多かった。別に友達がいない訳ではない。ただテンションについていけなかったり、興味がなかったりするだけ。彼氏との話を楽しそうにする友達を冷めた目で見つめていれば、「ツウィ、聞いてる?」って言われるのは当たり前で。気がついたら私の周りに人はいない。とはいえ1人でいるのが嫌いなわけじゃない。本を読んだりするのが好きな私にとって休み時間にずっと話してるような友達はいらなかった。

「ツウィー!!!帰ろー!!!」

わざわざ話しかけて来るのなんて幼なじみのチェヨンくらいだ。1年生になってみんな友達が出来ていく中で取り残されている私。私の性格を理解してるからこそ無理に誘ったりはして来ないけどチェヨンは私と真逆のタイプだ。噂じゃ色んな人と遊んでるらしいけど…そんなことを思っていたら突然鳴ったチェヨンのスマホ。例のお友達に呼ばれたようでどっかに行ってしまった。帰り道で急に1人になるのも慣れっこだ。まあ1人で考え事しながら歩くのも好きなんだけど。

『あれ?ツウィ…?1人なの?』

声をかけてきた先輩はこの学校の生徒なら誰でも知ってる、生徒会長のパクジヒョ先輩。とは言っても同じ部活の先輩だから知らないはずないんだけど。真面目で優等生、そんなイメージを持たれることも多いはずだ。別に素行不良という訳では無いけどほとんど友達と絡みを持たない私は、みんなから頼りにされているこの先輩が苦手だった。まあ「優等生」のパク先輩はご丁寧に1人で帰る1年生の後輩にも声をかけてくれるのだ。

「はい…チェヨンが友達に呼ばれて行ってしまったので。」

『そっか…気をつけて帰りなよ!』

「…ありがとうございます。」

先輩と後輩という関係で特に話すことも無く、気まづい空気に耐えられずそそくさと帰り道を急ぐ。別に私になんか声掛けてくれなくていいのに、と思うのはひねくれてるのかな。












Jihyo side

誰かと共に生きていく自分が想像できなかった。





一家の長女として生まれた私は昔からお姉ちゃんなんだから、と言われることが多かった。比較的勉強も得意だったこともあって先生からも信頼されていたと思う。別に好きでこんなキャラをしているわけじゃない。本当は楽したいしちょっとくらい友達と悪いこととかしてみたかったりするけど、わざわざ貼られた優等生のレッテルを剥がす勇気は私にはなかった。そういうポジションに居るからと言ってやらなきゃいけない事を押し付けてくる同級生も多くてもう慣れてしまった。たまには私だって誰かに甘えたいと思う時もあるけど「しっかりした頼れる人」では無くなった時周りの人達が離れていくのが怖くてその1歩を踏み出せずにいた。まあ誰だっていいとは思わないけど。



先生から「ジヒョなら大丈夫だよね!」と言われたら「はい!」ってら答えるしかないじゃん…別に不幸だとは思わない。幸せだとも思わないけど。



ダンス部でリーダーをやっている私はこの日もダンスのプログラムを作ってきたせいで寝不足だった。結局メンバーみんなで話し合った結果、私の案は却下された。正直私に丸投げしたくせにここがダメとか気に入らないとかは言うチームのみんなに嫌気が差していた。別に彼女達のことが嫌いなわけじゃないけどそういうところは嫌いだった。そんなこと言う勇気あるわけないけど。そんなことを考えていたらどんどん落ち込んできて、ブルーな気分になるのも日常。こういう時私はよく帰りの公園のベンチで座って考え込む。1人で空を見上げていると落ち着くんだ…

「…ジヒョ先輩…?」

声のした方を振り向けばそこにはツウィが立っていた。いつも一人だし何考えてるか分からないけどやることはちゃんとやってる。そんなイメージだった。こういう生き方をしていたら楽だったのかなとか思ってしまうのはだいぶ精神的にキてるのかもしれない。

『どうしたの、ツウィこんなところで?』

「先輩こそ、何でこんな所にいるんですか?」

『私は別に…もう遅いから早く帰りな』

「こんな時間にこんな所にいて何も無いわけないじゃないですか、何かあったんですか」





Tzuyu side

帰る途中の公園で座っているジヒョ先輩を見つけた。別に、別に興味なんかなかったけど流石にこんな時間に公園にいる先輩が気になって声をかけてみた。なんでもないって言われれば言われるほど気になって話を聞いてみることにした。こういう人がいつもどんな事考えてんのか気になったのかもしれない。正直他人のことにここまで関心が湧いたのは初めてかもしれないなとか思いながら。

『なんでもないから、気にしないで』

「そう言われる方が気になります」

『ホントに大丈夫だから…』

「大丈夫ならこんな所に居ないですよね」

人と絡むのが少ないせいかこういう時になんて聞いていいか分からなくてストレートな聞き方をした。





先輩は色んなことを話してくれた。その真面目なイメージとは裏腹に実は結構ズボラだったりするみたいでなんかおかしくなってしまった。

「ふふふっ、先輩面白いですね」

『なんで笑うのぉ…恥ずかしいじゃん』

「何か面白くて、イメージと違いすぎて笑笑」

『イメージも何もこれが私なんだって…このままの私を受け入れてくれる人がいればなぁ』



それから先輩とはそこそこ話すようになった。とは言っても帰り際に話しながら帰るくらいだけど。それでもチェヨンには相当ビックリされた。「ついにツウィにも話す相手ができたと思ったらあのパク先輩とはね…まあ私はツウィに友達が出来て嬉しいよ」とか言ってるけど余計なお世話だよ、とは言わないでおく。

前よりも話す頻度が増えていった頃ジヒョ先輩にご飯に誘われた。学校とその帰り以外で会うのは初めてだから緊張しまくってたけど。

「なんか緊張してます…」

『そんなに緊張しなくても笑笑いつも話してるんだし』

「そ、そうですけど…」

『それに私が会いたかったから』

そう言われて嬉しいと思っている自分に気がつくのに時間はいらなかった。あれ私ってこんなキャラだったっけ。

『ツウィはこんなキャラだとは思ってなかったなぁ…なんか誰とも話さないイメージだったし笑笑』

「ジヒョオンニは誰かとこういう風に話したりしないんですか?」

『こんな話するのはツウィだけだよ笑笑』

「私は聞いたところで大したこと言えないですけど…」

『ツウィが聞いてくれるだけでいいの。ここまで本音で話せたのツウィだけだし、ツウィいなかったらやっていけなかったかも…』

「私もオンニがいなかったら学校がつまんないままでしたよ」

なんか2人とも告白みたいになってる事に気付いて赤くなっちゃった。恥ずかしくて冗談めかして言ってみた。

「なんか告白みたいですね笑笑」

『そうだね笑笑』



『………好きなのは本当だけど』

「私もですよ」

『違うの…恋愛としてツウィが好きなの…』

「えっ!?」

尻すぼみになったオンニの言葉を思わず聞き返してしまった。聞き取れなかったんじゃない、頭が追いつかなかった。別に偏見とかは無いけどオンニは女子、私も女子な訳で…恋愛的な目で見たことがなかったからただただびっくりしてしまった。

『ツウィは…私のこと、どう思ってる…?』

そう言われて気がついた。今まで誰の事にも無関心だった私がジヒョオンニの話をいくらでも聞いてたこと、いつも1人で(それかたまにチェヨンと)帰る自分がわざわざオンニと一緒に帰るために待とうと思ったこと、ジヒョオンニが悲しそうな顔をしてると自分まで悲しくなること、全部が…

「ジヒョオンニのことが好きです」

たったこの一言で全て説明がつく。その2文字になんで気づけなかったのだろう。そんなことはどうでも良くなるくらいに目の前で嬉し涙を流しているジヒョオンニが愛おしくて、あふれる想いに言葉も出ないまま強く抱きしめた。

『つうぃっ!すきぃ!』

「私も好き、オンニが好き」

最初は苦手だと思ってたんだけどな、いつからオンニがいないといけなくなったんだろう。自分が自分じゃなくなるようなこの感覚。こんな時にでもこんな事考えちゃう私は変なのかな。ただ1つ分かることは、言葉じゃ足りないくらいにあなたが好き。言葉で表しきれないなら行動で示せばいいと自分よりも少し背の低い彼女の口元にそっと唇を近づけた。





fin


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