短編・中編/番外編

□初恋/毛利元就【短編】
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「媚びてんじゃないわよ!何なのよあんた!」

「うろうろしてて目障りなの!」

「もうあの人に近づかないでよね!」

『……………』

「何とか言いなさいよ!」

女の一人が拳を振りかぶる。

めんどくさ。

『…はぁ………じゃあ訊くけど、おたくら四人さぁ、何で“あの人”のこと好きなわけ?』

「そりゃあ、あの笑顔でしょ」

「あの綺麗に微笑んだときのドキドキ感はもう!」

『ふっ…ふふっ』

「何笑ってんのあんた!」

迫る拳を華麗に避ける。

『っ、あはは!…ははっ』

「「…!?」」

『あーもう、面白いなぁ、おたくら。あんなのに惚れるとかほんっと…馬鹿だよね』

「な、何よ!」
「あんたには分からないのよ!」

『はいはい。まぁ、そう思ってれば?言っておくけど、あいつはおたくらみたいな数にものを言わせようとするやつは嫌いだよ?』

「っ、煩い!」
「力ずくで黙らせてやる…!」

『いいね。四人まとめてかかってきな!』


















「う…うぅ」

つまんなかったな。

『ほんとに馬鹿だねー。じゃ、明・日・ね♪』

「貴様の方が余程の馬鹿ぞ。一々相手にしているとは」


『あ、元就。委員会終わったんだー?』

「…本の整理があってな」


謝ってるんだなー。

『いいのいいの!負けるわけ無いし』

「…そうか」

ほっとしてる顔だ。

『…どっか行く?』

「フン…好きにするが良い」



付き合ってはいない。

ただ、仲が良いだけ………現状としては。

『ねぇ、そろそろ付き合ってよー』

「………何故我が」

『?…好きだからだけど?』

「…当たり前みたいな顔をするな」

『当たり前だもん。だって好きだから“ああいうの”に絡まれても平気なわけだし。っていうか負けるわけ無いけど。で、付き合ってくれない?』

「……………」

『…はぁ。…ま、良いよ。今日のところはもう帰る。…じゃあね』

冗談っぽく笑って言う。

いっつもわらってばっかりで疲れる。

何がそんなに笑えるのか、自分でも分からない癖に。

何愛想振り撒いてんだろ。

………嗤えるよ。





『……ねぇ、知ってる?元就。一番つらいんだ。曖昧な答えとか、無視とかってさ』

別れ際、聞こえないだろう大きさの声で呟く。

きっと…。

きっと一生言えない。

面と向かって言える日は一生来ない。

でも、それでも良いから。

一緒にいたい。

答えが帰って来なくても、無視されても。

『傍にいるだけなら…良いよね』

いつか、堂々と隣に立てる日が来るといいな。




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