長編

□no title/猿飛佐助【trip】
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此処は何処だろう。

すごく暗い。

夢かな?

あ、声が聞こえる。

心地の良い、女の人の声…。

誰だろう。

「千夏よ、貴女には役目があります。貴女にしか出来ない、大切な役目が」

役目?

何それ…。

「それは貴女が探すのです。…そうですね。着物をプレゼントしましょう。綺麗な、貴女に似合う着物を…」

声が遠退いていく。

ま、待って、いかないで…!







気がつくと、其処は布団の上。

夕焼け色の髪をした人が見ている。

「大丈夫?」

「は、はい」

痛い箇所は無いし、怪我は無いみたい。

「あの、こんにちは…。…此処は、何処ですか?」

「こんにちは。う〜ん、ちょっと待っててね」

そう言ってその人は姿を消し、そこには真っ黒な煙のようなものが漂っている。

取り敢えず起き上がり、正座になる。

そういえば、私の着ているもの、着物になってる…。

とても綺麗だし、色も私好み…。

…あの声の人が本当に?




暫くして、入口と思われる場所の襖が開いた。

「目覚めたか」

「はい。こんにちは」

「ああ」

入ってきたのは、さっきの人と、とても…大きい人…。

そうとしか言い様が無いなぁ、うん。

…いや、なんか…ゲームで見たことあるような…。

「何があったか覚えておるか?」

「いえ、此処が何処なのか、何故此処にいるのかもわかりません」

「そうか、それにしても礼儀正しい娘よのう」

…嬉しい。

茶道部だから礼儀には気をつけているけど。

大きな人が目の前に腰を降ろす。

「儂は武田信玄。お館様と呼ばれておる。此方は佐助だ。名を聞いても良いか」

「はい、名乗り遅れて申し訳ありません。私は桐谷千夏といいます」

「うむ、千夏よ。おぬしは神により、此処へ連れてこられたらしい」

か、神…。

マジか…。

「役目があるらしくての、詳しくはわからんが」

役目…。

やっぱりあの声の人の言う通りだ。

「…おぬしには此処にいてもらおうと思うているが、良いかの」

「…はい、置いていただけるのであればとても助かります」

「うむ。では佐助よ、千夏のことを頼むぞ」

「はっ」

そうしてお館様は部屋から出ていった。

少なからず緊張していたようで、無意識にほっとため息が出る。

「じゃ改めて、俺様は猿飛佐助。千夏ちゃん、何かわからないことがあったら訊いてね。」

「はい、ありがとうございます。あの…。訊きたいことは色々あるんですけど」

わからないことが多すぎる。

というか全てわからない!

「まぁ、そうだよね〜。お館様が散歩してて見つけた社にお供えしたら、神ってのの声がして千夏ちゃんが現れたんだって」

「………えーーー!」

けっこう小声だったけど、叫んでしまった。

「あはは、そりゃあ驚くよね。俺様も信じたくないんだけど見ちゃったからね…」
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