その武人、刻を渡られよ

□邂逅
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初めての光景に、その美しさに外をじっと見ていると
「美しいでしょう?毎日手入れをしているんだよ。」
気配にも気づけないほど魅入っていたのかはっとすると重低音の声の主の方を向く。

これまた声に見合った美形、何だったか...伊達男とでも言うに相応しい隻眼の男が湯気を立てる飲み物と食べ物のような物を大きな皿に乗せて側に近づいて来た。
「ははは、そんなに怯えないでよ。危害なんて与えるつもりはないしむしろ歓迎しているんだから。君、新しい見習いの軍人ちゃんでしょう?色々と話は聞いてみたいし、話したい事もあるんだけどね、全く父上が主を放って見習いと帰ってくるなんて。」

赤の他人に向かってよくもまぁ喋る男だ。その口調に親しみは覚えやすいが。ひとまず信用ならない飲み物と食べ物はそのままに隻眼の男を見ると口を開いた。
「ここに来れば私の問いに答えると小烏丸とか言う奴に言われたんだ、早く答えてくれ。こんな所でおちおち話している暇はないんだよ。
ここは、一体どこなんだ、それに着ているその服...あぁ、思い出した。昔本で読んだぞ。あんたら、時の政府の奴なんだろ?今は何年だというんだよ。」
見習いとはなんだ、聞きたいことは腐るほどある。が、さっさと逃げ出した後に必要になるであろう情報だけに絞る。

「ちょ、ちょっと待ってよ。僕には答える権利がないんだよ、主が帰ってくるのを待ってくれるかい?もうすぐだとは思うんだけど...それにその様子、本部で何かあったんだね?説明は何も受けてないの?」
「説明なんざ知るものか。さっさと元の場所へ返してくれ。それから私の持ち物だって」
話を遮るように大きな音を立てて開いた扉の奥には大柄の若い青年が、その後ろには小烏丸が立っていた。
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