遊戯
□今時の魔法少年【学園編】
■手伝ってくれたらっていう約束だろっ。■
「そういえばそうだったな」
すっかり忘れていたらしい翔真に文句をいう気も失せてしまう。
黙っていたら何をされていたんだか……
「だったら手伝ったら触ってもいいと言うことだな。闘いは3度だから一回ごとに触らせてもらうぞ」
3度って何で決まってんだよっ。と、もう怒鳴る気力もなく素直に頷いた。
それだけで、翔真の顔に柔らかな笑みが浮かぶ。
無表情とのギャップどころではない光っているようにすら見える綺麗な笑顔にオレは思わずどきどきとしてしまった。
相手は男で電波(もしくは本物)なんだぁっ。といいきかせてもどきどきは止まらない。
なんか……ちょっと悔しい……
「一緒に寝るぞ」
当たり前のように同じベッドに潜り込んできてオレを抱きしめる翔真にオレも諦めて好きにさせるのだった。
**********
そして、朝、しっかりと学校の制服を着込んだ翔真と学校に向かったオレは校門のところで固まった。
「……ななな……何っ、アレッ!」
「だから敵だ」
あっさりと言い切られ、オレは正門の前をまじまじと見つめた。
正門にいるのは20人くらいの団体で、戦隊物のザコキャラのような全身タイツな格好の人がほとんどでその後ろにマントを羽織ったファンタジー風の鎧を着た頑強そうな青年と、お腹や脚出しまくりの女戦士風のビキニな鎧を着た少年が立っていた。
その顔は……
「何で、生徒会長と副会長が仮装してるんだよっ!」
顔すら隠していないのだから一目で分かるというのに、周りの生徒たちはあれは誰だと喚いている。
なんで?
「変身の道具には暗示の効果があって、関係者以外には正体は決して分からなくなっている」
説明を聞いてオレはホッと息を吐いた。
よかった。と、いうことはオレが珍妙な格好をさせられてもばれない(オレが分かるんだから敵役にはわかるかもしれないが……)ということだ。
その間にも悪役に扮した会長の木村千尋(きむらちひろ)さんと副会長の桑島皐月(くわじまさつき)さんは楽しげに校門に入ろうとする生徒たちが通るのを邪魔している。その横に立っている白衣にスーツを着た冷たい顔立ちの背の高い青年は教師だろうか? 見たことはないのだが何やらもくもくと手に持ったボードに書き込みをしていた。
「会長と副会長はわかるけど……あれって……」
「悪役には科学者が付きものだろう? 彼は専門教科のみだから君はあっていないだろうが桑島望月(くわじまもちづき)、教師をしている」
当たり前のように説明される言葉に全てが横に立つ翔真の手のひらの上なのだと今さらながら思い知らされる。
こんなやつに付き合って正義の味方ごっこなんてしていていいんだろうか?
やると言ったものの今さらながら後悔してしまう。
「この学校は我々が占拠した。返して欲しければ我々に学校の権利を譲渡したと一筆書いた書類を理事長自ら持ってきてもらおう」
「ふっ……早くしないと生徒を殺しますよ」
戸惑うオレを置き去りに事務的なのにしっかりと悪役な台詞を吐く二人にオレは慌てて翔真に顔を向けた。
「冗談だよな?」
「いや、今、この場所ではどんなことも許される。何人か関係者が行方不明になったとしても想定の内だ。止めたいならお前が止めればいい」
「っ……」
オレのポケットには渡された杖がある。
- ※変身する。
- ※説得してみる。
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