遊戯
□今時の魔法少年【学園編】
■プロローグ■
空もさわやかに晴れたある日の平和な早朝。
いつもと変わらずのんびりと学校に向かっていたオレの平和は突然現れたある男のおかげであっさりと消え去ることになる。
なんて、その瞬間までかけらも思っていなかった。
児島 亨。高校2年。どこにでもいる高校生。
突出したものはないものの運動は結構得意で、筋肉質ってことはないもののそれなりに高めの身長とスタイルの良さが少し自慢。細マッチョっにはちょっと足りないって感じかな?
顔だって、ものすごいイケメンなんて言えないけど普通に悪くはないし、女の子にだってそれなりにもてている。
何の根拠もなく未来が順風満々だと思っていたある日、そいつは現れた。
道の真ん中で、オレが進むのを邪魔するように立った見知らぬ少年。
切れ長の涼しげな瞳は長い睫に覆われ、鼻筋はすっと通っていて嫌みな程高い。 その染み一つない白い肌には薄い色の唇がバランスよく配置されていて、はっきりいってモデルだって裸足で逃げ出す程の美形だった。
「おめでとう。君は魔法少女に当選した」
しかし、その少年が言った第一声がそれだった。
……電波系……?
一瞬怯んだオレの手にその少年は先に丸い玉の付いた目に痛いピンク色の短い棒のようなモノを押し付けてくる。
「これで魔法少女に変身して世界の平和を守ってくれ」
「は? わけわかんないんだけどっ」
「抽選だ。後で変更はできるが、基本設定は「変身」と言ってボタンを押せばいい」
淡々と言いながらも少年はその端正な顔に似合わぬ怪力でオレの手にそれを押しつけ、派手な棒に付いた丸いでっぱりを押してしまう。
「ええっ!ちょっとぉ」
まばゆい光が杖の先の丸い玉から広がり、それが消えた時にはオレの身体には目に眩しいキラキラふわふわのミニスカートに包まれていた。
白いレースの付いたピンクのブラからは白い布が垂れ、同じピンクの下着が見えそうな程に短いふわりと広がるスカートの中には何枚もの白いレースの布が重なってスカートを広げている。垂れた布と二の腕までの長いピンクの手袋に、スカートの中から伸びたガータベルトで吊られているらしいハイソックスのせいで肌はほとんど隠されて入るが布は前開きでへそがちらりと見えるほどの長さしかなく、サンバか何かを踊る女性の衣装のようだ。
かわいい女の子(もしくはこのさい男の娘でもいい)が着たとしてもそういうお店にしか見えない無駄にセクシーな衣装は、身長のそこそこあって華奢でもないオレが着たらただのゴツイオカマ以外の何ものでもないっ!
「なななな……なんだっ、これっ!」
「だから魔法少女だ。君はその格好で敵と闘うことになる。僕は……見城翔真(けんじょうしょうま)。君のサポート役だ」
美形の少年……翔真はオレの見っともない格好を見ても涼しい表情だが、これがオレだけの夢じゃない証拠に通りがかりの人たちの怯えるような視線がチクチクとささっていた。
明日から外に出られないかもしれない。
「そんなことどうでもいい。それより、これ、どうやったら戻るんだよっ」
「……時間がたてばもどる」
説明を聞かないオレに少しむっとしながらも翔真はあっさりと答えた。
「それまで、戻らないのかっ!」
「が……僕なら解除できる」
翔真がオレの身体へと手を伸ばす。
また何かあるのかと咄嗟に振り払う。
「………………」
一瞬きょとんとオレをみた後、すぐに元の無表情に戻ってしまう。
「戻りたくないのか?」
「え、いや、そういうわけじゃないけど」
ビビッたとは言えずに今度はおとなしくしているオレの衣装の一部を翔真が触ったかと思うと同時にまた派手に光り、それと共にもとどうりの学生服に戻った。
慌てて自分の身体を見て、ホッと息を吐く。
あのままだったらどうしようかと思った……
「変身した状態ならいくつかの魔法が仕える。他にききたいことはあるか?」
状況を思いっきり無視したまま話す翔真をオレはキッと睨み付けた。
「どうしてオレが魔法少女なんだよ。女の子に渡せばいいだろっ」
怒鳴りつけるオレの前で翔真は不思議そうに首を傾げた。
「女だろう。児島 時子……高校2年」
「そ……それは去年結婚した姉だっ。年もオレより5つも上っ。なんだよ。その情報っ!」
翔真は不思議そうに軽く首を傾げつつ無表情にカチカチと何かの機械を弄っていたと思うとスッとオレに視線を向けてきた。
「すまない手違いだったようだ」
「あっそ。だったら返すよ」
杖を返そうと突き出すのに、翔真は受け取ろうとはしない。
「そういうわけにはいかない。抽選は抽選だ。君には魔法少女になってもらう」
言い切られてオレは呆然と翔真を見つめてしまった。
- ※関わりたくないから今すぐ逃げ出す。
- ※おもしろそうだからやってみる。
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