遊戯
□今時の魔法少年【学園編】
■変身する。■
「変身っ!」
杖を手に取りボタンを押そうとしたとき、野次馬をしている生徒の一人の腕がオレの手に当たった。
「うそだろっ!」
慌てて転がった杖に駆け寄る。
ころころところがる杖はどうにか拾うことができたが、オレは生徒たちの群から抜けて、生徒会長の千尋さんと副会長の皐月さんの前に立つような格好になってしまった。
慌てて後ろに戻ろうとしたオレの前に会長が一瞬でザコ敵を飛び越えて降り立った。
「お前が、俺たちの敵だな」
逃げる暇もなく玩具とは思えない程に冷たい剣の先が喉もとに触れた。
「あっ……」
「ふぅん、僕たちと視線が合っているということは君が選ばれたのか……あの方も趣味が悪いな。どうせ遊ぶならもっと見た目のいいのにすればいいのに」
副会長の冷たい視線がオレを値踏みするように見つめてくる。
あの衣装の事も知っていての視線に目を逸らしたくなった。
「イジメがいがありそうで、俺はけっこう好みかもなッ!」
「っ……」
言葉が終わるかどうかのタイミングで千尋さんが一っ飛びでザコ敵を飛び越え、オレの前に立った。
硬直したままのオレの顔を剣の先で持ち上げ、次の瞬間には大きな剣を軽々と振り下す。
切られたと思う間もなく制服のボタンが飛び、中のシャツが切り裂かれる。
たらりと垂れる血は夢なんかじゃなくて、会長の持っている剣が玩具ではないと教えてくれる。
「っぅ……」
「殺したり、身体が欠けるような怪我を負わせなければいいんだったよな」
「そうですね。五体満足ではないと結果が変わるかもしれませんから、ただ、それ以外なら何してもいい……はずです」
機械の音声のような感情の読めない声が書類を書き続けている青年から紡がれる。
ちらりと向けられた視線の先にいるのは誰かなんて今さら振り返る意味すらない。
「なら、ストリップといくか。今なら恥ずかしい姿を全員に見てもらえるぜ? ああ、抵抗はしてくれよ。嫌がって泣き喚いているのを玩具にするのが楽しいんだからな」
ニィッと笑われて背筋に悪寒が走り抜けた。
ヤ……ヤバイ人だぁっ……
どうしてオレの周りってこんなのばっかっなんだぁっ!
「皐月……止めるか?」
雑魚敵の向こうに立つ副会長に思わず視線を向けるものの、その女性めいた優しげな顔がにぃっと冷たく変わる。
「まさかっ……どうせなら、脱がすだけじゃなくてこの人形たちとの輪姦ショーの方が楽しんじゃない?」
「……そんなオプション付けてませんよ」
「兄さん……じゃなかった。博士、それくらい付けといてよ」
「次からは用意しておきます」
彼らの人ではない動くモノを相手にするような会話に身体から熱が引いていく。
この場ではオレは人ではなく舞台の上の人形でしかない。
逃げ出したい。
けれど、横腹にぴたぴたと当たる硬い剣の感触で指先すら動かせない。
「ストリップショーだけだと物足りないってさ。それなら、オナニーショーか、そこらの生徒でも捕まえて輪姦でもするか? 自分の命がかかれば男に突っ込むくらいするだろ」
唇が触れるほどの距離でにぃっと男臭い会長の笑みが浮かぶ。
ゾクリと身体から熱が引いていく。
これは冗談でもなんでもないのだと今さらながらの危機感にカタカタと身体が震える。
大怪我は負わないだろうけど、それ以上に男として大事なモノがボロボロにされるのだと今さら思い知らされた。
どうしてこんなことになったんだ?
「亨……助けて欲しいか?」
翔真の声が耳に届いて、ゴクリと息を飲む。
ここで助けてもらったら御礼として翔真に何をされるか分からないし、助けてもらわなかったらこの場で何かされてしまう。
相手が変わるだけで状況は変わってないような気が……
- ※自分でどうにかする。
- ※同じイタズラされるのなら翔真の方がいい。
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