むばたまの闇のうつつ

□嗚呼、美しき第二班の活動
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「セツナちゃんってクールだよね」





「君はなかなか・・・子供にしては達観してるな」






「セツナ、カッケー!」








“イメージ”というのは恐ろしい。





人は第一印象によってこの人はこういうイメージだ、と判断する。


そのイメージが自分にとって良くないもの、悪いものだったなら違いますよ、と本当の自分を曝け出してイメージを変えてもらうことが出来るだろう。





だけど、




そのイメージが自分にとって良いものだったなら?

人から自分はこんな良い風に捉えられていると分かったら・・・どうするだろう?



違いますよ、と声を上げて自分を曝け出す人間もいるだろう。

でもそれは本当の自分に何の引け目も感じていない人だから出来ることだ。



本当の自分が凄く不真面目で、怠惰でワガママだったら?

とても曝け出したりなんか出来ない。



あたしがそうだ。



クールだとか、


落ち着いているだとか、


真面目だとか、


達観してるだとか、


男っぽくてカッコいいだとか、



不特定多数の人に言われたそんなイメージが今の中忍、雪白セツナを形作ってる。



クール?

本当は、ただ疲れるのが嫌で程々に手を抜いてるだけなのに。



落ち着いてる?

本当は、間違ってないか、ミスしてないか内心バクバクなのをかっこ悪いから悟らせまいとしてるだけなのに。



真面目?

本当は、怒られたり説教されるのが嫌で、それで時間を取られるのがもっと嫌で無難に生きてるだけなのに。



達観してる?

本当は、リスクだとか面倒なことから逃げてるだけなのに。



男っぽくてカッコいい?

本当は、勿体ないからトワ(兄貴)のお古を着てるだけで可愛いものとか全然好きなのに。




まったくもって、イメージというものは恐ろしい。

自分を曝け出せないからって、面倒だからってそのイメージを変えようとしない自分が1番悪いって分かってるんだけど・・・






「あぁ、君がセツナ君だね。スイ君からよく聞いてるよ。真面目でしっかりしてて、女の子なのに同年代の男の子と同じぐらい・・・いや、それ以上に強いって」






皆が作り上げた虚像に腹を立てずにはいられない!






今、あたし達第二班は担当上忍であるスイ先生の友人?を名乗るおじさんと対面してる。

勿論、仕事・・・任務で、だ。


それも木の葉っていう里が受けた依頼じゃなくて、先生が直接受けて勝手に承諾した任務を本人抜きで!



スイ「ごめ〜ん。先生、この前の報告書仕上げるの忘れててこれからお説教なの。だから任務は3人でやってきて。

大丈夫。ランクはCで簡単な任務だから」




本当、一社会人としてどうなんだ、あの人。


嬉々として説教に赴いていったスイ先生のことを思い出してたら、右隣にいるアカネが鼻息荒くおじさんに力説してた。



アカネ「そーだぜ!セツナはスゲーんだ!いっつも30分前行動してて、頼まれたことだって完っ璧にこなすし!しかも、部隊だってもう1人で率いちまうんだぜ!

後!後!依頼人の中にはセツナにお願いしたい、ってリピーターが何人もいるんだ!」


セツナ「止めて。ハードル上げないで、アカネ」


アカネ「?」


シオン「チームメイトの俺が頼りなくて、アカネがバカだからよりいっそう際立つんだよな・・・ハハ、笑えねー」


セツナ「シオンも止めて。依頼人に不安を与える発言しないで」


アカネ「ところでおっちゃんの依頼ってどんな依頼なんだ?」


「あぁ、それは・・・直接現場で話すよ。ついて来てくれ」



現場?


工事現場とか、そういうところかな?










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「ここが来月オープン予定の動植物園だ」



分厚くて大きな鉄の壁に覆われたその場所は、まるでどこかの森林保護区みたいだった。

家族層をターゲットにしてるだとか、驚き楽しんでもらえるように本来の自然を使ってるだとかうんたらかんたら。


アカネが何度も「スゲー!」だとか「楽しそー!」って目を輝かせて言うもんだからおじさんの説明もヒートアップ。

何でもいいから早く依頼内容を言ってくれよ、とか思いつつ、あたしも笑顔で「へぇ〜」だとか「そうなんですか〜」って相槌を打つ。


そして話が切れたのを見計らって、いや、見極めて本題に移ってもらう。



セツナ「先程仰っていた現場、というのはこちらのことですか?」


「あぁ、そうだったね。・・・そうなんだ。このままではオープン出来ないんだ」


アカネ「何があったんだ?」


「それが・・・鍵をね、」


アカネ「鍵?」


「見ての通り、この動植物園はこの鉄の壁で覆われていて、制御室で扉の開閉が出来るんだ。だけど・・・」


シオン「だけど?」


「その制御室の鍵をね・・・うっかり動植物園の中で落としたみたいなんだ」



あたしは天を仰ぎたい衝動を必死に抑えた。

ここまでで依頼内容は大体把握出来たよ・・・。


スイ先生・・・

確かにこれはCランクの任務だよ。だけど決して簡単じゃない!この動植物園の敷地、一体どれだけ広いと思ってるんだ!

毎度毎度安請け合いしないでほしいな!


なんて、本人に言えるはずもない文句を脳内で続ける。



シオン「アカネ、セツナ・・・










俺帰るわ






アカネ「よし!分かった!俺達3人でその鍵を見付けてこればいいんだな!」


シオン「なるほど。俺の話は聞くに値しない・・・いいや、耳にすら入らないんだな・・・・」


セツナ「とりあえずどんな形状の鍵なのか、大きさ、色、その他諸々のスケッチをこちらにお願いします」



筆と紙を渡すこと数分。

描かれた鍵の絵、その横に書かれた長さを見て内心で肩を落とした。


やっぱり家の鍵サイズか〜・・・!



「獰猛な生物はいないけど・・・最近、外から来た渡り鳥が巣を作ってるようでね。ちょっかいを出されないよう気を付けてくれ」



最後にそう忠告を受けて、

あたし達は土嚢とかを使って作られたバリケード(制御室の鍵がなくて扉が閉められないから一時的に急ごしらえで作られた扉だろう)をのけて中に入って行く。



今日1日では絶対終わらないなぁ・・・これ







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