Falsa Justitiae

□嘘吐きでごめん
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祖父「そうか、そうか。○○高に受かったか。よかったな、血夜」


父「じゃあこれから自転車通学だな」


母「まずは制服ね」


祖母「身長ももう伸びる気配ないし・・・中学の時みたいに1つ上のサイズにしなくてよさそうね」



(寮生活をしてる血暁と都会の病院にいる血夕を除いての)家族揃っての晩御飯。

僕の高校生活?について話す皆の前で、僕は漬物を食べながら言った。



血夜「そのことなんだけど・・・」


母達「「「「?」」」」


血夜「僕、雄英受かったから4月から向こうで一人暮らしするね」



明日のご飯は魚にするね、的な軽い調子でそう言ったからだろう。

食卓が静まり返った・・・いや、それを通り越して凍り付いた。



祖父「んん?わし、耳が遠くなったかな・・・」


祖母「ゆーえい?ゆーれい?」



1番に反応した2人の耳がカルチャーショックになったらしい。

気にせず味噌汁を飲んでたら、お母さんとお父さんから質問が飛んできた。



母「雄英って・・・あの国立の?」


血夜「そうだね」


父「経営科・・・なんてことはないだろうし、普通科か?」


血夜「ううん、ヒーロー科」



また食卓が凍り付いた。

だけど今度はすぐに驚きの声が上がる。皆して近所迷惑ですよー。



祖母「い、いつの間に受けてたの・・・?」


血夜「んーと・・・2月の26ぐらい?」



入試会場に行くだけでグロッキーになったのをよく憶えてる。

都会の人の多さは異常だよね。電車を間違えた時は終わったと思ったよ。














〜 回 想 〜


血夜「や、やっと着いた・・・」


血夜「(じ、時間は・・・)」



鞄にかけてた腕時計を見る。

よかった・・・まだ余裕ある。早めに家出て正解だった。


駅があんなに入り組んでるとは思わなかった。人多過ぎだし、もうホント・・・



血夜「都会怖い・・・」



恐怖に打ちひしがれながら息を整える。

受付でもたつく前に受験票出しておこう。


鞄を開けて、それを取り出そうとした時だった。後ろから来た男子集団にぶつかった。

ドサドサと落ちる鞄の中身。Σべ、弁当がー!



「あ、すんません」


血夜「い、いえ、こちらこそすみません!」



道の真ん中で突っ立ってた僕が全面的に悪い。

けど、友達同士?の話に夢中になって前を見てなかった男子達にも少なからずの非はあると思います!


思うだけで言ったりしない・・・っていうか言えないけどね。

弁当はひっくり返ったけどゴムで蓋が明かないようにするタイプだから零れたりしてない。とりあえず良かった。


急いでぶちまけた物を拾って鞄に詰め込む。



血夜「(ん・・・?あれ?)」



受験票がない。

ウソだ。バスの中でも電車の中でも何度も確認した。忘れてきたなんてことはまずないのに。


あれがないと試験受けられない。そしてもれなくここまで来た意味がない!

内心でパニックになりながらノートの間とかに挟まってないか、違うところに入れてないか確認する。


だけどやっぱりない。



血夜「(お・・・終わった)」


「あ、おい。そこの人」



愕然と肩を落としてたら急にそんな声が飛んできた。

振り返った先にいたのは学ラン姿の黒髪の男子。


誰だろう?何だろう?

首を傾げる僕の前にその人が1枚の紙を突き出してくる。



「これ、あんたの受験票だろ」


血夜「!」


「あっちに飛んできてたぜ」



そうか。やっぱりさっき落とした時に・・・。

この人は受験票に貼ってる顔写真を見て判別してくれたんだろう。受け取った僕はすぐに頭を下げる。



血夜「あ、ありがとうございます!」


「もう落とさねぇようにしろよ。ここまで来て試験受けれなかったなんてシャレになんねぇからな」


血夜「はい。気を付けます」




「切島ー、先行ってるよー」



「あっ、おう!」



ピンクの髪の女の子が受験票を届けてくれた・・・ええっと、きりしま君?に声をかけてた。

友達・・・いや、彼女さんかな?



切島「じゃあ俺も行くわ。試験、お互い頑張ろうぜ!」


血夜「あ、はい。どうも」



気さくな人だな・・・。

都会ってチャラい人がいっぱいのイメージだったから何かビックリした。


とりあえず僕も早く会場に行こう。


受験票を見せて大きくて広い講堂に。

そこにいるのは何千・・・もしくは何万人?の同級生達。話には聞いてたけどやっぱり雄英って凄いんだね。


受験番号順に割り振られた席に座って(1番端っこだった)、実技試験の説明が始まるのを待つ。

時間になって現れたのは何かサングラスをつけたクラブのDJみたいな人。



「今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!」



シーン、と静まり返る講堂。

あれ?これってようこそーって繰り返すところだったのかな?



「こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!アーユーレディ!?YEAHH!!」



また静まり返る講堂。

皆そういうノリじゃないんだよ、きっと。



「入試要項通り!リスナーにはこの後!10分間の「模擬市街地演習」を行ってもらうぜ!!

持ち込みは自由!!プレゼン後は各自、指定の演習会場へ向かってくれよな!!O.K.!?」



演習会場はどうやらA〜Gまであるみたい。

因みに受験票に書かれてる僕の会場はBだ。



「演習場には“仮想敵(ヴィラン)”を三種、多数配置してあり、それぞれの「攻略難易度」に応じてポイントを設けてある!!

各々なりの“個性”で“仮想敵”を行動不能にし、ポイントを稼ぐのが君達(リスナー)達の目的だ!!勿論、他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」




「質問よろしいでしょうか!?」




真っ直ぐに手を伸ばして立ち上がったのは眼鏡の男子。

見るからに真面目そうだ。


その男子が事前に渡されていたプリント片手に言う。



「プリントには四種の敵(ヴィラン)が記載されております!誤載であれば日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!!

我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!!」




血夜「(政治家の街頭演説みたい・・・)」




「ついでにそこの縮毛の君!」



眼鏡の男子に指を差されたのはどうやら、その後ろに座ってた緑の髪の男子みたい。



「先程からボソボソと・・・気が散る!!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」


「すみません・・・」



「オーケーオーケー。受験番号7111くん、ナイスなお便りサンキューな!四種目の敵は0P!そいつは言わばお邪魔虫!

スーパーマリオブラザーズやったことあるか!?レトロゲームの。あれのドッスンみたいなもんさ!各会場に1体!所狭しと大暴れしている「ギミック」よ!」




「有難う御座います!失礼致しました!」



「なるほど・・・避けて通るステージギミックか」


「まんまゲームみてえな話だぜ、こりゃ」



説明を聞いて口々に上がる声に僕は内心で首を傾げた。


ゲーム・・・?実技試験で?

ヒーローを目指す奴等がゲーム感覚で敵に挑むと?



血夜「(腐ってんな・・・)」



ま、そういう輩はすぐに落ちるだろ。



「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう。かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!「真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者」と!!

―――“Plus Ultra(更に向こうへ)”!!それでは皆、良い受難を!!」





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