SEVEN COLORS


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似てる2人はすれ

――――――――――――――――――――


楓・部員達「「お疲れ様でしたっ!!」」



放課後の部活を終えた少女達は最後に挨拶を終え、各自部室へ戻って行く。

ただ、1人を除いては・・・



女子「?楓ちゃん、行かないの?」


楓「ちょっと今日、バッティング上手く出来なかったから残ろうと思って・・・」


女子「ストイックだねー。無理し過ぎちゃダメだよ?」


楓「あぁ、分かってる。ありがとう」



お互い軽く手を振って別れようとした時・・・



  カキーンッ!



野球部の1人の少年が練習でホームランを打った。

同時に周りから湧き上がる女子の黄色い歓声。



「武ー!!」


「素敵ーーー!!」




楓「(Σあのファンクラブ、部活まで見に来てんの・・・?)」


女子「カッコいいよね、山本君・・・」


楓「え、あ・・・あぁ、そうだな」


女子「彼女とか好きな子とか・・・いるのかな?」


楓「どうだろ、分かんない。・・・本人に聞いてみたら?」


女子「そ、そこまで気になってるわけじゃないんだよ(汗

わ、私もう行くね。部室の戸締りよろしく」


楓「?うん。じゃあね」



いそいそと部室へ向かう少女を見送り、楓は野球部の方を見る。

正確には・・・先程ホームランを打った1人の少年を。



山本武、1年野球部レギュラー・・・同じクラスの人気者。

ファンクラブが存在していて、京子やくるみ同様並中のアイドルと言っても過言ではない少年。



楓「さすがに無理だよな・・・(ボソッ」



呟き、深いため息を吐く。

そして自嘲染みた笑みを浮かべ・・・



楓「あたしも・・・沢田みたいなもんかな」





そんなアイドルに―――恋心を抱くのは。





楓「(くーちゃんのことバカに出来ないなー・・・)」



何だかんだ言って小さな行動を起こす彼女とは違って、自分は行動を起こそうともしない。

そんなくるみや山本のファンクラブの皆は凄い。


誰かに彼が好きだと打ち明けることも出来ず、全く興味のないフリをする自分自身は・・・ダメな奴だ。

そんなダメな自分に、彼が振り向いてくれるはずなどない。



楓「あーもー、ダッサ。激ダサだよ、あたし・・・」



自分で自分の頭を殴り、バッティングの居残り練習にとりかかる。


何度も何度もマシンから飛んでくるボールを打ち、何度も何度もボールを拾いに行く。

それはまるで、頭の中を練習でいっぱいにして自分の抱く恋を考えないようにしているかのようだった。



自分には・・・もうこれしかないと言っているように―――










   ◇  ◇  ◇












野球部員「山本ー、上がろうぜー」


山本「おー、そうだな」



持っていたトンボを元の場所へ戻し、自分を呼んだ少年のところに行こうとすれば・・・



  カキンッ!

   カキンッ!



ソフトボール部の方から、バットでボールを打つ音が一定のリズムで聞こえてきた。



山本「ん?あれって・・・」


野球部員「高橋さんだな」


山本「だよな。居残り練か・・・さすがだなっ」


野球部員「カッコいいよなー、高橋さん・・・。あの目で見つめられたらドキッとする」


山本「確かにちょっと目力あるよな。冷たいっつーかさ、」


野球部員「そこが魅力なんだよ。・・・やっぱ、彼氏いんのかなー?」


山本「んー、どうだろーな。そんなに気になるなら直接聞いてみろよ」


野球部員「そんな簡単にいくかよ。話しかけるだけでも緊張しちまうのに」


山本「ハハッ、そっか。

悪ぃ、俺やっぱまだもーちょっと残る」


野球部員「おいおい、まだ腕治ったばっかなんだから無理すんなよ?」


山本「おう。じゃーな」



自分を心配して言ってくるその少年に別れを告げ、彼は再びグローブをつける。

そしてボールを手に取る前に、ソフトボール部の方・・・今も1人練習をしている少女をチラリと見た。



高橋楓、1年ソフトボール部レギュラー・・・同じクラスメイト。

運動神経も良く、成績優秀で正に文武両道。隙のない完璧過ぎる少女。



山本「俺じゃ釣り合いとれねーよな・・・(苦笑」





スポーツだけで勉強が出来ない自分では―――彼女の隣に立てない。





山本「(今日も獄寺と仲良さそうに喋ってたからな・・・)」



くるみや紗那達と一緒に獄寺に絡んで楽しそうにしていた。

不良という問題はあるが、獄寺は運動も勉強も出来る。


自分とは違って釣り合いがとれている。

ただの野球バカな自分に、彼女が振り向いてくれるはずなどない。



山本「情けなねーのな・・・俺」



首を横に振り、ピッチングの居残り練習にとりかかる。


何度も何度もボールを投げ、何度も何度も拾いに行く。

向こうでバッティングの練習をしている少女と同じく、心の中に秘めた恋から目を背けるように。



自分には・・・もうこれしかないと言っているかのように―――











似てる2人は今日もすれ違う。








END

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