泡沫の夢

□闇の中の光
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連戦となった2回戦。

桑原はイチガキチームとの対決で重傷を負い、飛影、覆面の2人は水魅と共に本部の罠にはまって戦線を離脱している。


浦飯チームに残っているのは、幽助、蔵馬、そして補欠の鈴音の3人。

補欠はチームのメンバーが死んだ時にしか戦えない。


2対5の絶対的不利な状況。

その中で蔵馬は敵の手の内を暴くために試合に赴いた。



小兎「蔵馬VS画魔―――始め!!」



彼女の言葉を合図に画魔と呼ばれた対戦相手が両手に筆を持つ。



蔵馬「?」


画魔「元来、化粧には凄い魔力が宿っている。人間も祈願祭などでやるだろう。日常生活でも女は魅惑の粧を使うしな」



言いながら彼は自らの目や口、体に化粧を施していく。



画魔「俺があんたに化粧の本当の魔力を見せてやろう!俺特性の化粧水を使ってな!」



化粧が終えたのか、筆を収めた画魔が両の拳を握りしめる。



画魔「―――戦闘の粧!」



小兎「なんとォ!全身に模様を施した画魔選手!!急激に妖気が高まっていきます!!」



画魔「しゃあーっ!!」



高めた妖気を右の拳一点に集め、その拳で蔵馬に殴りかかった。

サッ、と避けた蔵馬が元いた場所に彼の拳がめり込む。コンクリート製のリングを軽々壊してしまう程の破壊力。


しかし、蔵馬にとっては脅威でも何でもなかった。



蔵馬「(妖気内在のパワー型だな。間合いを詰めず、ローズ・ウィップでしとめる!)」



鞭を出そうとする蔵馬。

だが、それよりも早く画魔が追撃してきた。



鈴音「あれじゃムチを出せない・・・」



小兎「画魔選手の凄い連続攻撃!!蔵馬選手、反撃のチャンスがありません!!」




飛影「(敵の性質を見極めてから戦法を決める蔵馬の悪いクセだ。あれだけスピードがあると、武器を出す隙が作りにくい)」




画魔「植物を武器化する時間は与えねェぜ。このままケリをつけてやる」




水魅「あらあら、大分研究されているようね」


橘花「?なんか嬉しそうですね、水魅さん」


水魅「そりゃあ嬉しいわ。蔵馬が追い込まれているなんていい気味だもの」


橘花「アハハ・・・さいですか」



恍惚な顔でリングを見つめている水魅に橘花は顔を引き攣らせて笑う。


彼女達がそんな話をしている間に蔵馬に隙が生まれたらしい。

鞘から出した筆で画魔は彼の左足首に∞マークのようなものを書いた。


途端、蔵馬の左膝がガクッ、と曲がる。



蔵馬「う!?足が・・・!?」


画魔「くくく、どうだ!?足が鉛のように重いだろう!!あんた、もう逃げられねェぜ!!死の化粧からなぁ!!」



小兎「なんと画魔選手、敵にも呪いの化粧を施すことが出来るようです。それに加えて、あのスピードと攻撃力!!蔵馬選手、大ピンチ!」



「画魔の作る化粧水はどんな服も通り抜けて皮膚に付着し、アンテナの役目をし、呪いを受信する。ひとたび捕まれば逃れる術はない・・・!」



画魔「はぁあっ!!」



左足を引き摺るように攻撃を避けていた蔵馬だったが、それにも限界がくる。

蔵馬の動きが鈍くなったのを見計らい、画魔は彼の残り右足と両腕に同じような化粧を入れた。



画魔「とらえたぜ!―――獄錠の粧!

あんたの手足の自由を奪った!!例えるなら手足それぞれに70キロの鉄球付きの錠をはめたとでも言うとこか」


蔵馬「くっ、」


画魔「更に例えれば、成人男子4人を担いで戦っているようなもの。これで自慢の武器は一切使えまい!!」




鈴音「そんな・・・!」




小兎「ああっと!蔵馬選手、両手足を封じられてしまった!!これは万事休すかー!?」




鈴音「蔵馬!!」



不安そうに、心配そうに顔を暗く歪ませる鈴音。

その声を、彼女のその顔を見た蔵馬は―――



鈴音「え・・・」


鈴音「(今・・・)」




画魔「くくく、身じろぎさえせんとは覚悟を決めたか?さぁあ、一撃で決めてやるぜ!!」



自分の化粧で動けなくなった蔵馬に画魔は襲い掛かる。

蔵馬との距離が2m弱に達した時にソレは起こった。



画魔「!?」



飛びかかってくる画魔の前で、蔵馬が右足を軸に反転した。


途端、画魔の体が切り刻まれた。


蔵馬の髪にいつの間にか巻き付いていた―――ローズ・ウィップによって。






蔵馬「悪いな。使えるのは手足だけじゃない」



小兎「ああっと!まさかの大逆転!!なんと髪の毛でムチを操り、画魔選手に決定的ダメージを与えました!!」





鈴音「凄い・・・」


幽助「さすが蔵馬だぜ!」





橘花「うわぁ・・・」


↑蔵馬のローズ・ウィップにいい思い出がない人(笑


水魅「つまらないわね」


↑蔵馬がやられるところを見たかった人





画魔「ぐっは・・・。ぐっ、つめを・・・・誤ったぜ。少々、手こずってでも、あんたの妖気全てを防ぐべきだった・・・」


蔵馬「あまり喋らない方がいい・・・。もう勝負はついた。俺の呪縛に使っている妖気を解いて、自分の傷の治癒に向けないと危険だぞ」


画魔「くくく、そうかな。勝負はまだ分からねぇ・・・」


蔵馬「呪縛されたままでも今の君よりは素早い。無駄死にはよせ。君は死ぬには惜しい使い手だ」


画魔「光栄だ!!」



心底誇らしげに、蔵馬に褒められたことに笑みを浮かべた。

そうして、フラフラな足取りで、かつ傷口から血を吹き出させながら、画魔は拳を振り回してくる。


飛び散る血。

開く傷。

その度に響く画魔の絶叫。



蔵馬「よせ!!無理に動けば本当に死ぬぞ!」





水魅「・・・、」


水魅「(あの冷徹で冷血な妖狐が随分人間臭くなったものね・・・)」





画魔「ハァ、ハァ・・・ハァ!!」



右腕が千切れ落ちても彼は攻撃を止めない。

血をまき散らしながら当たらない攻撃を繰り返してくる。



鈴音「何でそこまで・・・」


鈴音「(そこまでして戦いを止めないの?死んだら意味ないのに・・・。脅されてるわけでもないのに・・・・どうしてこんな大会に命を懸けるの?)」



命を削りながら戦う画魔の姿を彼女はもう見ていられなかった。


大量の血と、大量の脂汗を流した画魔がとうとう力尽きる。



小兎「ダ・・・ダウン!!カウントをとります。1―――」



蔵馬「・・・もう2度と立てないだろう」



小兎「2!3!」



画魔「く・・・くくくくく」



立ち上がることも、動くことも出来ない画魔が何故かそこで不気味に笑った。

小兎のカウントが続く中で、確かに彼は蔵馬に向けてこう言ったのだ。



画魔「・・・封じた」


蔵馬「何?」


画魔「あんた・・・俺の筆には注意していたが、返り血には無頓着だったな・・・・。化粧水の正体を教えてやろう」




鈴音「!まさか、」




画魔「―――俺の血さ」




蔵馬「!!」



体に描かれた紋様に気付くと、〈封呪〉という文字がスゥ、と浮かび上がってきた。



画魔「用心深く頭の切れるあんたに化粧を施すのは正に命懸けだ。

―――念縛封呪の粧!!あんたの妖気は完全に封じたぜ」


蔵馬「っ・・・」


画魔「これが、忍よ・・・。先の勝利のために、死を選ぶ」




鈴音「!」



個ではなくチーム、仲間といった全を優先させた彼の行動に彼女は胸を打たれた。

自分の命を投げ打ってでも成し遂げたいことがあった。理解は出来ないながらも、その理念は自分と似ている、と。



画魔「俺が死んでも10分位は妖気は消えねェ。それまで・・・次の相手をかわせるかな・・・・」



小兎「―――10!!」



蔵馬「しまった・・・」



先鋒戦が終わる。

控えていた魔性使いチームの1人、十字のマスクを被っていた者が布を脱ぎ捨てる。



小兎「次鋒、前へ!!」



「でかしたぞ、画魔・・・。10分で十分だ。敵は討つ」






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