泡沫の夢
□絆を力に
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幽助「ひ〜〜〜、体がズタボロだぜ。早く家帰って休まねーと」
鈴音「病院で手当てを受けるって考えは皆無なんだね」
剛鬼を倒して、街に戻ってきた頃にはすっかり日が沈んで夜になってた。
うちは体を引き摺って歩く幽助の歩調に合わせながら隣を歩く。
肩を貸そうとしたんだけど、女に支えてもらうような格好悪いことは出来ない、って断られたんだ。
だからこんなにゆっくり時間をかけて家に戻ろうとしてるの。
鈴音「(うちが支えて歩いた方がすぐ家についてすぐ休めるのに・・・)」
そういう男のプライド?とかいうのうちには分かんないや。
そうやって聞こえない程度にため息を吐いた時、幽助が腕にしてる妖気計が急に反応した。
幽助「妖気計に反応が!?200・・・150m。近付いてくる!!」
鈴音「そんなに近くに!?」
幽助「奴等の1人か!?」
鈴音「も、もしそーだったらどうする・・・?」
幽助「い、いくらなんでも街中じゃ襲ってこねーだろうが・・・今は、とても戦える状態じゃねーぞ・・・・!!」
鈴音「!幽助!あの人・・・!」
幽助「!いた!奴だ!!」
学生服を着た長い赤髪の男子。
確か、あの人は仲間を抜けるとか言ってた・・・
幽助「蔵馬って奴だ・・・」
鈴音「うん」
赤髪のその人が近付いてくる。
敵意は・・・今のところ感じられないね。
蔵馬「警戒しなくていいよ。俺は戦う気も逃げる気もない。頼みがあるんだ・・・・・」
幽助「頼み?」
鈴音「?」
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ぼたん「あたしは罠だと思うけどね」
幽助の家に戻ってきたうち等は、剛鬼を連行して戻って来ていたぼたんさんにさっきあったことを話したんだ。
それを全部聞いたぼたんさんの第一声がこれ。
幽助の傷の手当てをしながらぼたんさんは言葉を続ける。
ぼたん「話が出来過ぎてるよ」
鈴音「うちもそう言ったんですけどね・・・」
蔵馬「3日待ってくれ。3日経ったら間違いなく宝を返す」
ぼたん「なんてさ。3日後っていったら、ちょうど満月だろ。蔵馬が持ってる宝、暗黒鏡は最大の魔力を発することが出来る日なんだ。
あの鏡は覗いた者の欲望を映し出す鏡。映った望みを叶えてくれるといわれてるんだ。
ただ、願いを叶えるためには〈あるもの〉を捧げなければならないらしいけど・・・それが何かは謎なんだ。きっとその3日間にその秘密を探る気でいるんだよ!」
幽助「・・・・・・でも、それならわざわざ俺の前に姿を見せる必要はねェわけだろ?」
ぼたん「あ・・・そっか」
幽助「俺・・・あいつに会って話してみた印象だけなんだけど、そんなに悪い奴じゃねーような気がするんだ」
ぼたん「なっ。何言ってんだい!?あんたをそんなにボコボコにしたのはあいつの仲間なんだよ!!」
鈴音「それもうちが言いました」
幽助「ぼたん、お前にゃまだ言ってなかったけど・・・実はあいつ等3人、仲間割れしてたんだよ。
蔵馬って奴は仲間を抜けようとしてたんだ。理由は分かんねーけど。
だから、きっと何か心境が変化する出来事があったんだよ。あいつの目、ウソついてる感じじゃなかった・・・。勘だけど」
鈴音「それは・・・うちも思ったけど、」
何かを覚悟したような目。
宝を盗んで、自分の望みを叶えようとしてる人・・・ううん、妖怪がどうしてあんな目をしてたんだろう。
うち等が黙り込んでいると、温子さんが夕食が出来たって知らせに来た。
温子「鈴音ちゃんとぼたんちゃんって言ったっけ。あんた達も食べてきなさい」
ぼたん「あ、ありがとうございます」
鈴音「すみません」
幽助「おいおい、今大事な話してんだからよー。雰囲気ぶち壊し」
温子「あら、何よ。母に話せない話なの!?
ところであの子達、あんたの何?もしも螢子ちゃんと三股かけるようなマネしたら承知しないよ」
鈴音・ぼたん「「?」」
幽助「ちーがーう。全然そーゆーんじゃないって」
仲の良い親子だね。
その微笑ましさにうちは微笑を浮かべる。
そうしてうち等は4人で夕食をとった。
窓の外からそんなうち等の様子を窺ってた人の気配に・・・気付きもしないまま。
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