ようこそ、学生アパートへ

□学生アパート
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初めまして!うちの名前は東雲瑠璃だよ!


地元の中学を卒業して、うちは家からちょっと遠い高校に進学することになったの。

だから3月19日の今日、高校に通うための新しい住まいに来てます!



その名も・・・











―――学生アパート








瑠璃「確か・・・うちは301号室だったよね?」



アパートの外観を見ながら、うちは荷物片手に呟く。


このアパートの大家さんはうちの幼馴染みのお婆ちゃん。

その幼馴染みもここから高校に通うことになって、お婆ちゃんが「じゃあ大家やってみな」とかいう爆弾発言したの。

だから、その幼馴染みが来る明後日までは大家さんは不在。


必要なことは前もって教えてもらってたから大丈夫だけど、色々心配だなぁ〜・・・。



だって、このアパートへの入居条件の1つに、


どんなことにも耐えられる精神をもつこと


とかいう怪しさマックスの条件があるんだよ!!心配にならないって方がおかしいでしょ!



瑠璃「うち・・・やっていけるかな」


すると・・・








「あなたが・・・東雲瑠璃さん?」







瑠璃「え・・・?」



急に声をかけられて、ちょっと驚きながら視線をアパートの外観から目の前に向けてみたら・・・

凄い美人さんが立っていらっしゃる!!クールビューティだよ!クールビューティ!!


とか興奮してたうちだけど、名前を確かめられたのを思い出して返事をする。



瑠璃「は、はい。そうですけど・・・あなたは?」


千鶴「私は渡辺千鶴。このアパートの101号室に住んでるの」


瑠璃「あ、そーなんですか?えっと・・・その方がどうして?」


千鶴「今日、あなたが入居するって大家さんに聞いたから、色々手伝おうと思って・・・あ、この場合は〈元〉大家さんね」



ニコリと笑って言う千鶴さん。

う、美し過ぎる・・・!


あれ・・・?っていうか〈手伝い〉?



瑠璃「わざわざすいません!お世話になります!!後、よろしくお願いします!」


千鶴「フフ、そんなにかたくならなくても大丈夫よ。ここに住んでる他の皆も、全員あなたと同じ学生なんだから」


瑠璃「いや、でも・・・」


千鶴「案外、あなたのような子はここでは珍しいぐらいなのよ?」


瑠璃「そ、そーなんですか?」


千鶴「ええ、だから大丈夫。それじゃあ、あなたの部屋に行きましょう。

他の荷物は、もう部屋に届いてるはずだから」



千鶴さんに案内されて、うちはアパートに入る。

(アパートなのにオートロックって・・・)


しかも、何このエントランス・・・!想像してたのと違い過ぎるんですけど!?

綺麗過ぎるし、もうアパートって言えないよ!これ間違いなく高級マンションだよ!!



瑠璃「(これで家賃があんなに安いなんて・・・)」


千鶴「驚いた?〈元〉大家さん、太っ腹過ぎるでしょう?」


瑠璃「は、はい。住む方は凄く嬉しいことなんですけど・・・大家さん、いや〈元〉大家さんからしたら大変なんじゃないかって」


千鶴「私も前に1度そう聞いたら〈学生のためのアパートなんだからこれでいいのよ〉って、笑顔で言ってたわ」


瑠璃「アハハ・・・さすがアイツのお婆ちゃん」



考えることが常人と違うね・・・(苦笑


千鶴さんの後に続いて2階に上がれば、どこからか凄い大声が聞こえてきたの。




「テメェ!!また必要ねぇ菓子いっぱい買いやがったな!!(怒」


「糖分は必要だよ!!糖分は脳の活性化にいいんだよ!!」


「何も詰まってねぇユルユルの脳みそのどこを活性化させるつもりだァ!!!(怒」




瑠璃「ケンカ・・・?」


千鶴「いつものことだから気にしないで」


瑠璃「え、いつものことなんですか?」


千鶴「ええ、あの〈双子〉は毎日のように言い合ってるから」



近所迷惑とか考えないのかな・・・?

っていうか、隣の人はよく文句言わないね。慣れちゃってるのかな・・・?


千鶴さんに〈気にしないで〉って言われたから、うちは気にしないことにする。

あれだよ。触らぬ神に祟りなしってやつ。



千鶴「ここがあなたの部屋、301号室よ」


瑠璃「ここが、新しいうちの家・・・」


千鶴「ええ、あなた色に染められるあなただけの家。素敵でしょう?」


瑠璃「な、なんか、今になって緊張してきました・・・(苦笑」



扉を開けようと手を伸ばした時、隣の302号室の扉が開いて誰かが出て来たの。

それはスケッチブックを小脇に抱えた、年下っぽい男子。



千鶴「あら、水月君」


水月「あ、ち、千鶴さん・・・こ、こんにちは。ど、どどどどうしたんですか?こ、こんな、ところで・・・・」



なんかスッゴイおどおどしてるんだけど・・・。

恥ずかしがり屋なのかな?全然千鶴さんの顔見てないし・・・



千鶴「丁度よかったわ。紹介するわね。今日からここ301号室に住む新しい子よ」


瑠璃「東雲瑠璃だよ。よろしくね」


水月「よ、よよよろしく・・・お願いします。ぼ、僕は・・・・に、新沼水月です」



自己紹介する時ぐらい顔を見てほしいんだけど・・・

うち、そんなに怖く見えるとか?


もしそうだとしたら・・・ちょっと、いやかなり悲しいね(苦笑



千鶴「水月君はあなたの1つ下、今年中学3年になる子なの」


瑠璃「あ、やっぱりそうですか。へぇ、中学生も住んでるんだ・・・」


水月「す、すいません・・・」


瑠璃「いや、謝ることじゃないよ?」


水月「あ、すすすいませんっ(汗」


瑠璃「(ダ、ダメだ・・・!言えば言う程謝られる)」


水月「ぼぼ、僕はここここれで、失礼、します・・・」



結局1度も顔を上げてくれることはなくて、新沼君は俯いたまま階段を下りて行っちゃう。

う〜ん、うちが接してきた中では新しいタイプの子だね。



千鶴「人見知りと引っ込み思案な性格もあって、初対面の人には決まってあんな感じなの」


瑠璃「でしょうね・・・(苦笑」


千鶴「スケッチブック持っていたでしょう?あの子、凄く絵が上手いのよ。

仲良くなったら、見せてもらうといいわ」


瑠璃「仲良くなるには・・・長い道のりな気がします」


千鶴「そうかしら?あなたならすぐ仲良くなれると思うけど・・・」


瑠璃「買い被り過ぎですよ」


千鶴「まぁいいわ。今は早く荷物を整理しちゃわないとね。話は後でゆっくりしましょう」


瑠璃「はい」



気を取り直して、うちは扉を開ける。


ここが今日からうちが住む、新しい家!!






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