とある宝石の唄

□転生→宝石〈7〉
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シンシャside


春になって、煩い奴が目覚めて、久しぶりにそいつは俺のところに来た
ただ歌う為だけに…飽きもせず

何度言ってもジャスパーは来る、此奴は自分に正直に行動するしかない奴だから

でも、だからこそ…正直な此奴だからこそ…
俺に会いに来るのが決して憐れみとか、そういったものではないのが分かるから…
俺も、途中から嫌とは言わなくなった

虚の岬の崖で俺の左側に腰掛けて、ギターを取り出しチューニング…とか言う調整をして音を確認しているジャスパーの姿を、俺は特に何かを言うわけでもなく見つめていた


久しぶりに聞く、ピンと張った弦を弾く音が一番近くの左耳をくすぐった
この音が不快ではなくなったのはいつからだったか
とはいえ、ジャスパーが原因不明の眠りについたのは俺と話すようになってから二週間と経たない間だった

それから、12年も経つのに…俺はこの音を未だに覚えていて、その音を聴いて落ち着く自分がいる


シン「……おい」


俺から話しかけるのが珍しいのもあったが、きっとそれ以上に、俺が自分でも信じられない程柔らかな表情をしていたからかもしれない
少し驚いた顔をして、ジャスパーは俺の方を向いた


『どう、したの?』


フワリと、潮風がジャスパーの髪を揺らして消える
月明かりと、俺自身や俺の水銀の色を鈍く反射しているジャスパーの翠の髪と瞳を数秒程見つめてから、俺は目を逸らした


シン「…いや」


シン「まずはお前の歌を聴いてからにする」


何故だか、その目を見て言いづらくなった俺は言いたい事を後回しにした
邪魔して悪い、と口にすると全然気にしてないから大丈夫だ、とそいつは笑った


『それじゃ、シンシャが何を言いたいのかを早く聞く為にも、歌うとしようかな?』


そう言うジャスパーが、ギターを弾き始める姿を俺はまた初めて聴いた時と同じようにジッと見つめていた
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