小説2

□生徒会長
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【ナンバーワンよりオンリーワン】が校風のためか、比較的自由な学園生活。
しかしながら節度・統制はやはり必要なのか、月に1度だけ全校集会なんてものが存在する。

先生や生徒会会長とかが熱く語ってはいるが、イヤホンのおかげで聞こえない。この日だけは不思議と髪の毛を下ろしている女子生徒が増える。

「今日は何聞いてる?」

「うん?いつものだよー 思わずウリャって叫びそうになっちった」

「もー詩織やめてよー けどこんな集会もやめればいいのにね」

先生の話が終わったところで一度ざわつく会場。
続いて会長の紹介がされ、いやみなメガネの女生徒が登壇する。

「なんか、あの生徒会長さんてすごいらしいよー」

「へー なんで?」

「勉強もすごくできるのに、ピアノとバイオリンのリサイタルもしたんだって。あとネイルとかアロマも詳しいし・・運動以外はなんでもできるみたい。まるで夏菜子と正反対だね。」

悪意の無い言葉ほど深く傷つけるものはないのかもしれない。
苦笑いをしつつ、壇上に目を向ける。

「あんな優等生さんと比べても仕方ないよ!私たちは私たちだし。よし!今日はうちも定休日だから久しぶりにいこっか?」

「うん!やったー」

放課後の約束を交わし、再び電源のスイッチを入れ自分の世界に入り込む。目線は見るともなしに舞台を見ていたが、次第に壇上の女生徒の仕草や表情に心を奪われだしていることに気づく。ちょっとした好奇心もあり、電源を切りイヤホンを外す。髪をかき上げると途端に熱量のある声が耳に入り込んできた。


「・・・・・ほしいと思います。最後に、私の好きな言葉に未来へススメという言葉があります。私たちはまだ学生で不器用だけれども、今はまだそれも構わない時期だと思います。真っ直ぐに夢に向かって、未来に進んでほしいと思います。今月もご清聴ありがとうございました。」

言い終わると男子生徒を中心にまあまあ大きめの拍手が起きる。そういえば毎月結構な拍手で終わったんだなーって気づいていたことを思い出だす。なぜかちゃんと聞いていなかったことが急に残念でもあり、同時に申し訳なくも思えてくる。

「来月はちゃんと聞いてみようかな」

「ん?何を?」

「会長さんのあいさつ」

「あー 今日もいいこと言ってたね 」

「え?詩織聞いてたの?」

「うん!会長さんの挨拶は結構みんな聞いてるみたいだよ!聞いてないのは・・」

「はいはい。分かりましたよー」

ちょっと拗ねながらクラスに向かって歩き出す。


授業が始まっても、夏菜子の頭には朝の会長の顔が浮かんでいた。

(そういえば・・似てるかも・・・)ふと ある可能性が頭をよぎり、こそこそと学園のホームページを閲覧する。挨拶で使っていた言葉を思い出し、可能性は期待に変わる!

(生徒会長は・・・・あった!)

期待どおりの答えがそこには掲示されていた。




第28代生徒会長   佐 伯  彩 夏


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