小説2

□ひととき
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今日は朝から雨模様。
こーゆー日は部屋でゆっくり過ごすに限るわけで。
バーチャルコンサートでストレス発散中。

最近のバーチャルでの流行はアンドロイドアイドルだとか。
もちろん普通のアイドルみたいのもいるんだけど、次々に新しいのが出てくるから今は2年も続けばいいほうみたい。
最近のお気に入りは、観戦よりも歌うほう。よく見る夢の影響かアイドル気分で熱唱することが多い。好きなのは平成時代のアイドル。特にももいろク・・・

「夏菜子― ドタドタうるさいよ!!新学期の準備は終わったの?」

いきなり聞こえてくる現実。アイビジョンをずらすとお母さんが仁王立ちで目の前に・・・

「あっ・・と・・・ごめんなさい・・・」

バーチャルは人に見られると恥ずかしさはこの上ない。珍しく素直にあやまる。

仕方なく鑑賞モードに切り替え、椅子に座り足を投げ出す。

「悲劇のアイドル・・かぁ〜・・それにしても・・・・似てるなー」

耳には相変わらず軽快なロック調の音楽が流れてはいるが、頭はすごく冷静でアップモードにされたセンターで歌う少女を見つめる。

こんなところもそっくりだし・・・と口元に人差し指を持っていき、くっきりと凹んだエクボをなんとなく触る。
苗字は違うけれども名前は一緒。何年か前から周りの人たちにもちょくちょくと言われるようになり、当然自分でも意識はしているが・・実は悪い気はしない。

最後の挨拶の途中で電源を切りアイビジョンを外し机に置く。

おもむろに引き出しを開け、かわいらしい小箱を取り出しフタを開ける。中には小さく赤い御守りが入っていて白文字で《夏菜子》と刺繍されている。しばらく見つめたのちゆっくりとフタをを閉める。

いつしか雨はやみ暖かな日差しが入り込んでいた。窓を開けると淡く色づいた桜の木が気持ちよさそうに揺れていた。


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