小説

□虚(石原)
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この地位に来ることは容易ではなかった。
しかし暴力団に足を踏み入れると決めたあの日から、覚悟はあった。
上からの理不尽な要求や罵倒に耐えに耐え、出来るだけ表情を動かさず感情を表に出さず、自分のすべてを殺していた。
そうしてようやく掴んだこの地位でさえ通過点に過ぎない、もっと上へ…俺は登りつめる。
いくらでも俺の意のままに動かせてみせる…

目の前の女だってそうだ。数日前、紹介された愛人の1人。名前は…夢子だったか。
権力と金をチラつかせそして時折、強引に…。
こうやってアメとムチで手なずければ、色々と便利だろう。

「あ?声…抑えるなよ」
ベッドに倒れこむように重なりあい衣服を千切るように脱がせ刺激を与えてやれば、体は従順に反応を見せる。しかし夢子は必死に声を押し殺しているようだった。
今更なんだ。抵抗したところで何も変らないだろうが。

与える刺激に適度に強弱をつけながら、今度は夢子の耳元で責めたてる言葉を投げかけ自分の置かれている状況を理解させてやる。
言葉を加えたせいか、身体は熱を帯びていき、こわばっていた表情は解けていくように見えた。
「なんだぁ? …言われて興奮してきてるじゃねえか。とんだ淫乱だな!」

自分のシャツを脱いで放り投げ、見せつけるようにベルトに手をかければ潤んだ瞳でこちらを見る夢子と視線が交わる。
「…もう欲しいのか?あぁ?」
ベルトを外し、自分も衣服をすべて脱いで夢子の脚を掴んでみせる。
勿体ぶる必要はどこにもない。
夢子の最も熱を帯びたそこへ、俺のモノをあてがい押し進めていく。
途切れ途切れに零れる夢子の声は、意外にそそるものだった。
あどけないような反応とは裏腹に艶を増していく声に、責め甲斐を、感じた。
「…っく。いいか…
お前はっ…俺の…」
所有物、が適切か。まぁこの際なんだっていい。

繋がった箇所に大きく水音が響く。
そろそろか…
腰の動きを速め、この行為を終結に導く。
夢子の身体が大きく反応を見せだせばグラインドを交え責めたてる。するとすぐさま絶頂を向かえ、羞恥と快楽にまどろんだ表情を見せながら果てた。
こうやって快楽を支配するのは清清しさを覚える。いい眺めだ…
俺の熱を夢子へ注ぎこみ終えるまで、その表情を見ていた。
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