Release from the darkness

□天使の翼
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この胸を焦がす炎は、何だろう





空には細く尖る月が浮かんでいる


星色の髪が、風になびいた



どうして君を 好きになってしまったのだろう



紡いだ歌詞に、そっと口を閉じる


そのような事、分かるはずもなく


気がついたら、私は君が大好きだったのだから



「エレナ。そのように窓に近くては、危ない」

「ホメロス」


コツコツと、靴の音が響く

背後にたった彼は私の首の周りに腕を回した


「飛んでいくなよ。そのまま…」

「いかないよ。ホメロスは心配性だね」

「あんなことがあれば、な……」

「翼のこと??」

「ああ……」

「どこへも行かないわ。行けないもの。」


あなたのそば以外になんて、行けないもの


「…美しかった」

「気持ち悪いと、言わないのね、貴方は」

「驚きはしたが、そうは思わない。美しかった。ただ、そう思った」

「…貴方といる時だけは、伸ばしていようかな」

「フ、好きにしたらいい」


風に、ひとひらの羽が舞った






時を少し、遡る


いつも通りにエレナは教会に出かけていった


いつもいる女の子が、いないことに気づく


「ね、あの子は?」

「そういえばいないね!」

「どこいっちゃったのかな??」

「さがそ!おねえちゃんもいっしょに!」

「ええ。」


エレナは初めて、下層と呼ばれる場所に知らず知らず足を踏み入れることになる


子どもたちは兵士の目をかいくぐって教会へ来ている


故に、帰りも兵士の目をかいくぐってしまうのだ


正規のルートであれば、見張りの兵士は全力で止めただろう


しかし、見張り一人いないルートを通られては、どうしようもなかった



「此処が……下層」


同じデルカダールの城下とは思えないところだった


「かえして!」


いつもの子の声だと、エレナはすぐに捉えた


常人を超えた視力は少女から何かを奪った男を簡単に捉える


迷わず弓を引き、矢を足元に放った


「女だ!その女を抑えろ!」

「仲間…!?」


気づくのに一瞬遅れたエレナは瞬き一つで気絶させられる


子どもたちはバラバラと隠れる場所を求めて散らばった


男達は少女から奪ったものとエレナとを抱えて、デルカダール城下を跡にした






異変に気づいたのはやはりこの男だった


「おい、まだ戻ってないのか」


部屋の掃除をしている侍女にそう尋ねる


「ええ。いつもならとっくに戻っている時間なのですが……でも城下ですし。兵士さんも何も言ってませんよね??」


それはそうなのだが。


ホメロスは落ち着かない


「少し私が様子を見てくる。誰か来たら野暮用で出ていると言ってくれ」

「分かりました。日も沈んでおりますから、お気を付けて」


ホメロスが歩くたび、装飾が鈍い金属音を鳴らす


「まったく、どこをほっつき歩いているのだ……」


急な出撃か!?と振り返る兵達に片手をあげ制止する


城を出て、城下へ続く階段の見張り兵がホメロスの姿を認め声をかける






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