Release from the darkness

□過ぎ去りし日々
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相棒の目が私を見つめている

翡翠を嵌め込んだような、美しい碧の瞳が



Leaf──葉、1枚の葉


その名前は確か


あの大樹に宿る全ての葉を


守る脚として君に与えられたと


遠い遠い昔に


聞いた気がする


君の小さな子供たちは


それぞれユグノアから他の王国へと連れて行かれた


寂しそうなあの瞳を


悲しく見つめていたのを覚えている


君の声を、聞いた気がした


君の嘶きが、空を震わせた気がした






「ここは……?」


ぼんやりと目を覚ますと、そこには見慣れない光景が広がっていた


整えられた調度品、並べられた机や椅子


丁寧に敷かれた絨毯


どれ一つとっても、ここ数年私とは無縁のものばかりだった


そう、まるで城で暮らしていたあの頃のような光景が広がっていた



頭がぼんやりとしている


ここは何処だろう


姉様は、義兄様は、そして、レオンは


今何処でなにをしているのだろう


私は今、何処で何をしているのだろう


起こした体が自分のものではないような感じがした


そっと両手を見つめる


何の変哲もない、私の手だ


遠くから、馬のいななきが響いた


「リーフ……」


呼んでいるの?


意識を外を向けた時に、足音が近づき扉が開いた


「はっ!?目を覚まされた!?シスター!シスター!目を覚まされましたあ!!」


来たかと思えば私を見るなり飛び出していく侍女の人


目を覚まされた?


眠って起きて、そんなに驚くようなことだろうか


「あれ、そういえば私どうして……」


おやすみなさいませ、姫


脳裏に甘い声が響いた


「ああ、そうだ。あの人にそう言われて…」


ホメロス、だったか


白銀の煌めきと共に魔物をたった一刀で仕留めた、あの黄金色の瞳をした男の名は


コンコン


ノックの音が部屋に響いた


「はい?」

「ホメロスです。入りますよ、姫?」


ああ、噂をすれば何とやら


あの男が早くも現れたらしい


ねえ、貴方


本当は白馬の王子様なんじゃない?


冗談で聞いてみようだなんて


そんなことを思った


「どうぞ」


私の返事を待って、彼が扉を開く


今日も黄金色の髪が美しく陽の光に輝いていた


「気分はどうです?」

「別にどうとも。」


ホメロスは後ろ手に扉を閉めるとゆっくりと寝台のそばまで歩いてきて、膝をついた








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