Barcarole of Prisoners

□Departure of Prisoners
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ナプガーナ密林をソルティアナ海岸へとぬけ、街道沿いに進むと道が別れた。

「ドゥーランダ山?」
「ああ、霊峰です。ユグノア縁の一族が居るとか。ご存知ありませんか?」
「お父様が言っていた、男の子なら修行に行くって所かしら。私は女の子だから、関係ない話であまり聞いていないけれど」
「ならばきっとそうでしょう。私が閉鎖命令を出していたのもあって、あの郷とデルカダールはそりが合わない。出来れば避けたいのですが」
「特に用事もないのでしょう? なら、ソルティコに向かいましょう」
「ええ……そうしましょう」

道を左に折れて、2人はソルティコの町を目指した。

「ねえ、ホメロ……ジャスパー」
「はい?」
「魔物の様子が変ね。皆目を緑に光らせていて、なんだか不気味だわ」
「これは城を出る前に部下から聞いた話なのですが、悪しきチカラによって凶暴化しているそうですよ。以前見た魔物でも、随分強力になっていると……なるべく避けましょう。なに、心配はいりませんよ。私が貴方を護りますからね」
「え、ええ……頼りにしてるわよ、ジャスパー」

ホメロスは少し微笑んで、再び前を見た。



それは、贖罪と記憶探しの旅。
導は、彼の記した手記と、彼女の記憶。
行先は彼の望むままに。

それは過酷な果てしなき旅路。
祖国へ背を向け、行く旅路。

彼は海戦が得意だった。海にて多くの戦功をあげた将であった。

なれば彼のゆく道は、陸路と言うよりは海路か。航路か。

そう、彼は果てしなき贖罪の航路をゆく──彼女と、青く大きな海を漕ぎゆく、美しき船乗り。

どうかその旅路の果てに、僅かな救いのあらんことを。

彼女はそう願い、彼共にその航路を共に漕ぎゆく。

───それは果てしなく、過酷な贖罪の航路の始まりであった。



───Departure of Prisoners────

(それは、罪を負ったもの達の船出)

2019/11/09*


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