One Piece*short

□痛いのは嫌い
1ページ/6ページ






コンコン


ノックを2回すると中から響く入室を許可する声。

中に入るとちょうどベットから起き上がるところで。




『あ、まだ寝てた?ごめん、出直そうか?』


「・・いや、構わねぇよい」



彼はこちらも見ずにそう告げる。

朝に強いマルコがこんな時間まで寝ていたなんて珍しい。

昨日は宴会だったにしろ、いつもはその翌日も朝からきっちり起きて仕事をしているというのに。



半裸でベッドから身体を起こしたままの姿勢でボーっとしているマルコを見ていたら何か笑えてくる。

あ、しまった。映像でんでん虫持ってくるべきだったかな。



『水、飲む?』


「・・・あぁ」




やや間があって眠そうな返事が聞こえる。

ベッドサイドの水差しからグラスに注ぐと手渡して。

何となく室内を見渡していたらチェアに無造作に放ってあるいつものシャツに目が止まる。


昨日脱ぎ捨てて寝たのかな?

あとで洗濯に回しておこう。



それにしても、もう冬島の海域だというのに、半裸で寝てて寒くないのだろうか?

エースといいマルコといい、父さんが好きなのは分かるけれど。




『ねぇ、寒くないの?』


「・・・・」




シカトかい。

寒いんじゃねーか。やせ我慢か。そうなのか。




ピーン!と。

頭の上に裸電球が浮かぶ。

・・・良いこと思いついちゃった。



勝手知ったるマルコの部屋を、タンスの方に歩いて。

無遠慮に引き出しを開けるとガサゴソとベージュのニットといつものシャツの新しいものを取り出す。

彼は同じようなシャツを何着も持っている。

そのままベッドまで戻ってくると、マルコの肩にシャツ、ニットの順にかけた。



うんうん。色的にもちょうど良い感じだよね。

私センスいい!



『マルコ。それ2つとも袖通して』



まだ眠いのか、覚めやらぬ状態のマルコに声をかけてシャツに腕を通させる。

ついでにニットも着てというと素直に従った。



やっぱり寒いんじゃんね。



いつも全開にしっ放しのシャツのボタンを閉めてあげようとベットに膝をついて手を伸ばすと。

しかしその手は無言で掴まれて拒絶を示されてしまった。


え、寒いクセに前を閉めるのは嫌だって?

この人達はどこまで・・・


思わず苦笑してしまう。




『お腹、痛くならない?』



「・・ならねぇよい」




頑固だなぁ。


それにしても何だろう今日のマルコは。

大人しすぎて不気味。

寝ぼけてるか、風邪でも引いたのだろうか?




まさか・・・・鬼の撹乱?

いやいや。そんなこと言ったら殺される。




『まさか体調悪い?』


「いや、」



大丈夫。

たぶんそう言おうとしたマルコを気にせず近くに腰を下ろして、両手でマルコを引き寄せると額をそこに合わせる。

軽く目を伏せて体温を確認してみるけれど、熱はないようだった。


んー?ほんとに単に疲れてるだけかな?



額を離すと、少し吃驚した顔のマルコと目が合う。




『・・?・・なに?』




軽く首を傾げて聞いてみても何も答える気はなさそうで。

熱はなさそうだよと言えば、"眠いだけだよい"と言い捨てられた。


ならいいけれど、その少し不服そうな顔はなんなんだ。

言いたいことがあるなら言ってよ。




『そういえば、今日の新聞持ってきたよ』



ベッドヘッドのテーブルに置いておいた新聞と眼鏡を手に取って、新聞だけを渡す。



マルコは朝と夜と、書類仕事中だけ眼鏡をかけている。

不死鳥なのに目が悪いのかと最初は疑問に思ったが、みんなが口々に"鳥目"だとか"老眼"だとか言うから、一緒になって笑ってたら覇気付きの拳が全員にお見舞いされたっけ。

思い出すだけで頭頂部が痛い。



・・・と、まあそれは置いておいて、

眼鏡は単純に似合うと思っている。


両手で眼鏡を開いて躙り寄れば、素直に顔を差し出された。



・・・え、、だからねぇ。その素直さなんなの?

驚きと、少しの、、いやかなり疑問に思ったが、まあ都合がいいのと、ちょっと可愛いからまぁいいか・・・・なんて、口が裂けても言えない。







次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ