『夢より儚い夢の世界』―黒執事長編夢―
□その主人公、《不安定》
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ファントムファイヴに仕え始めた名無しさんは今深刻な睡眠不足に悩まされていた。
何せ毎夜毎夜《刺客》が屋敷を襲撃に来るので、相手をするのに睡眠時間を削られるのだ。
『はぁ…』
名無しさんは転がった死体を眺め溜め息を吐く。
それもこれもセバスチャンが刺客の始末を名無しさんに任せっきりになってしまったからだ。
『ったく、あの悪魔…』
屋敷で明日の準備をしているだろうセバスチャンに文句の一つも言いたくなる。
『…寝よ…』
名無しさんは欠伸を一つして自室へ戻って行った。
『葬儀屋が私を呼んでいる?』
翌朝、寝不足を引きずった名無しさんはシエルの部屋に呼び出された。
「ああ、今日一日、葬儀屋の店に来いとな」
『そうですか』
「お前は預かった身だからな、葬儀屋の機嫌を損ねてさっさと返せじゃ僕が困る」
シエルは新聞を読みながらそうぼやく。
『では、今から行って参ります』
「うむ」
シエルに一礼してから名無しさんは部屋を出た。