『夢より儚い夢の世界』―黒執事長編夢―

□その主人公、《初仕事》
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名無しさんはシエルの部屋に呼ばれた。


「早速だが…《情報屋》以外でもお前には役立ってもらうぞ」

『あ、はい…“坊ちゃん”』


この先の展開を知っている名無しさんは敢えてシエルを《坊ちゃん》と呼んだ。
幸運にもシエルは理由に気付いてはいないようだ。


『私は何をすれば…?』

「そうだな…得意な事はあるか?」


シエルの問いに暫く思案した名無しさんは答える。


『《用心棒》はいかがでしょうか?』

「腕に自信があるのか?」

『はい、多少は』


こっそり《悪魔の力》を使えば大丈夫だろうと名無しさんは考える。


「良いだろう、では用心棒をしてもらう」

『はい坊ちゃん』


名無しさんは深くお辞儀した。


「他の使用人を紹介させる、セバスチャン」

「はい坊ちゃん」


部屋にセバスチャンが入って来ると、付いて来るように促された。


『では失礼します』

「ああ」


パタンと扉が閉まり、先を歩くセバスチャンを追いかける。


「先ずは料理人のバルドロイから紹介致しましょう」

『はい』


てくてくとキッチンに向かう。


――ドカーン!――


「…またあの馬鹿は…」

『……』


キッチンから爆発音が聞こえてきた。
名無しさんはバルドロイが火炎放射器でも使ったのかと考え付く。
セバスチャンに気取られぬように少しワクワクした。
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