『夢より儚い夢の世界』―黒執事長編夢―
□その主人公、《人形》
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カランカラン…
店の開く音がして、その店の店主は入って来た年端も行かぬ少年と連れ添いの執事と女性を見やる。
「いらっしゃいボク。
お父さんのお使いかい?」
『《…まぁ仕方ないよなー…》』
「……」
あからさまに不機嫌になる少年、シエル。
その目前にスッと手を出して執事、セバスチャンは言う。
「失礼、主人の杖を受け取りに参りました」
「ああ、この杖の人か。
こんな短い杖、一体どんな人が使うのかと思ったら…まさかこんな子供―…」
ビュッ
店主がそう言い終わる前に受け取った杖を店主の顔面に突き付けるセバスチャン。
「歪みもなく、素晴らしい杖ですね」
『…えー、お釣りは要らないですから』
慌てて名無しさんはコインの詰まった袋をカウンターに置いた。
スタスタ店から出るシエルをセバスチャンと追いかける。
「ったく…フィニの馬鹿力にも困ったものだな」
『おかげで杖を新調する羽目になりましたからねぇ…』
「そうですね、身長が伸びた訳でもないのにお手間を取らせました」
『セバスチャンさんそんな意地悪な言い方は無いでしょう』
「おや、意地悪ですか?」
クスリと笑うセバスチャンを名無しさんは呆れ顔で見やる。
そうして一行は屋敷へ戻って行った。