蝋人形の館

□運命の足音
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ドアの向こうから、厳粛な神父の声が聞こえる。
神聖な雰囲気を漂わせた教会に、一人の男がいた。
スーツ姿の男が振り返る。
ユイは申し訳ない気持ちが溢れてごめんなさい、と頭を下げると扉を閉めた。
教会の外で、またもやウェイドと途方に暮れる。




「どうする?ここで待つ?」


『いくら何でも、協会の前で葬儀が終わるまで待つなんて失礼よ。』





すると、さっきの男が出てきた。
男は不機嫌さを隠そうともせず、ウェイドに怒りをぶつける。




「あぁっ…どうも、先ほどは失礼を…」


「立ち入るべきじゃなかった。」


「すみません、あの…車が故障して…ファン・ベルトが欲しいんです。」


「ファン・ベルト?
そんな物の為に人の葬儀を邪魔したのか?」





先に埋葬させてくれ、と言うとスーツの男ボーはタバコを投げ捨て、教会のドアの前にいるユイの横を通り過ぎる。
本当にごめんなさい、と悲しげな顔をして謝ったユイに素っ気ない返事を返し、ちらりと彼女を見た。




ー恋に落ちた瞬間だった。ー





が、動揺を隠して教会のなかにまた入る。
ドアの向こうでしばらく考えたあと、迷っている暇はないと確信したボーは再び扉を開ける。
ウェイドと帰ろうとするユイを引き留めた。




「おい。」





二人は振り返る。
ボーはユイを近くで見つめ、気持ちを確信すると優しい眼差しで彼女にだけ謝罪した。




「……すまなかった。俺にとって大切な人が亡くなったんで、つい…」


『そんな謝らないで下さい!汗
怒るのは当然だと思いますし、何より勝手に入った私が悪いので…』


「葬儀はもうじき終わる。
30分後くらいにスタンドで待ち合わせないか?」


『本当ですか!?
ありがとうございます!』




ユイの凄く嬉しそうな笑顔を見たボーはしばらく見とれる。

こんなにも自分のストライクな女を見たのは初めてだった。
絶対に逃がすか。
どんな手を使ってでも物にしてやる。
だが…それにしても冴えない野郎を連れてやがるな。
お前じゃ釣り合わないな。
とボーはウェイドを睨むとまたユイを見て、教会に戻って行った。






『やったわ、これで車も直せるしユキも喜ぶ……って、ウェイドどうしたの?』


「……別に、また君のファンが増えたよ。」


『…私のファン? 何の冗談なの?』


「本気だよ。ドールトンだって明らかに君にぞっこんだし。」


『…くす、本当に貴方の考えることは可笑しいわ。』




ユイはあきれて笑うと、時間を潰す為に蝋人形館へ向かった。
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