蝋人形の館
□運命の足音
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あれから月日が経ったある日、大学生になったユイとユキは友達とフットボールの試合観戦の為にスタジアムへ向かっていた。
だがキャンプ場で一夜を過ごした翌朝には車が故障しており、ユイとウェイドは車の修理に不可欠なファン・ベルトを購入するため、行きすがりに出逢った男から教えて貰ったアンブローズという小さな町へ来ていた。
森のなかにあるその町は、カーナビにすら載っていなかった。
来たはいいが、全く人の気配が無い町のなかでユイとウェイドは途方に暮れていた。
『教えてもらった場所に間違いなさそうだけど、なんだか寂しい町。』
「歩くの早過ぎだよ、ユイ。」
『そう? 普通じゃない?』
そう言って笑うユイの笑顔は、信じられないくらい綺麗で同時に少し寂しそうだった。
ウェイドは、大学でも抜群に可愛いと人気のあるガルシア姉妹の姉と、どうにか付き合いたくて紳士を装っていたが、小さい頃から両親特に父親からの暴力を受けていたユイは、実はさりげなくのらりくらりとかわしていたため、キスすらしていなかった。
だが、同時に鈍いユイは笑顔だけでどんな男も惚れさせてしまう事はおろか、相手を天性の魅力で振り回している事すら知らなかった。
しかも、妹のユキも姉と同様に男性を信じていなくガードが硬かったが、信用している姉や友人と話している時の幼さが人気でもあり大学でもガルシア姉妹はいろんな意味で有名だった。
そんな人気者のユイと二人きりなウェイドはキスしたくなるのを堪え、壁に貼られたミスコンの話題を振る。
「ミス・アンブローズか。
一体どんなブサイクな子が勝つんだ?」
『もうウェイドったら。
そんな事言ったら、優勝者に失礼でしょ?』
ユイは笑う。
僕はその笑顔のためならどんな事でもするとウェイドは内心思う。
唯一、許されている手繋ぎをするとガソリンスタンドへ向かう。
しかし、中は無人だ。
再び人を探して途方もなくアンブローズを彷徨しているとウェイドが蝋人形館を見つける。
「ねぇ、入ってみようよ。」
『ちょっとウェイド、ファン・ベルトはどうするの?』
「だって人がいないし…」
ふと見ると、左手に教会が見えた。
『あ、協会があるわ。
あそこで聞いてみましょう。』
「あぁ…そうだね、そうしようか。」
二人は教会のドアの前に脚を踏み入れた。