Already.

□籠の中の鳥
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事が終わり、テミナはシーツに体を投げ出した。
「ヒョン…、僕もう…」
限界だと。
苦しそうに目を伏せて、君は訴えた。
初めて見る乱れた姿。
そうさせたのは、俺。
その俺は今、満たされているのか。
答えは…。

後ろからテミナを抱きしめた。
「ん…ヒョン…大丈夫…?」
自分の体のほうが辛いはずなのに、君は俺を気遣う。
汗ばんだ体から、より一層香りが立っている。
何にも冒されない、君はいつだって清廉潔白なまま。
寒い冬の日の陽だまりみたいな、俺の拠り所。

そう、君は閉じ込めておけない。
籠の中の鳥にしてはいけない。
俺はずっとそれを願っていたはずだ。
そしてこれからもそうでありたかった。
穢して壊して、それで何が残るのか。
最初からわかっていたのに。
君を抱いてから、こんなにも実感が湧いてくる。

何も言えずに、ただ抱きしめる手に力を込めた。
「…ヒョン…ごめんね」
小さな声でテミナが言った。
「謝るな。おまえが謝らなくていい」
「……僕、ジョンヒョニヒョンの気持ち、よくわかってるから。
いつも僕を見てくれていることも、詩の意味も、僕なりに、わかってるよ」
息を整えてから、諭すように穏やかに君は言う。

ーーテミナ。
君はこんなにも大人になっていたの?
拒まなかった理由も。
謝る意味も。
もうずっと不安定な俺の心を全部、今日のこの衝動ごと、君は受け止めてくれていた。
本当に君はもう子供なんかではなくて。
とっくに自らの手で、籠から出ていたんだ。
「テミナ、ごめん……」
抱きしめたまま、今度は俺がそう言った。
君はこの震える声に気付いているのだろうか。
「…何も知らないままでいてよ。今まで通りでいい」
いつものように、陽だまりのように俺の隣で笑って。
「うん。…ヒョンは不器用だね」
「うるさいな」
「僕、ヒョンのこと大好きだよ」
「知ってる」
どこまでも穏やかなその声に、なんだかどうしようもなく泣きたくなった。
「じゃあ…部屋にいないとミノヒョンがホテル中探し回っちゃうかもしれないから、もういくね」
テミナはするりと腕から離れた。
服を整える衣擦れの音を聞きながら、そちらを見ないままで俺は言った。
「テミナ。あの曲はちゃんとおまえにあげるから。おまえのために、書いたから」
「…うん、ヒョンありがと」
テミナは嬉しそうに答えて、部屋から出ていった。
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