Already.
□守りたいもの
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俺には、この世界に入ったときからずっと、大切に大切に守ってきたものがある。
たくさんの欲望や嫉妬が渦巻く、必死にしがみつかなければ生き残れないこの世界で。
俺が、守っていきたいもの。
ーーテミナ。
それが大切な君の、名前。
テミナと初めて会った時、彼はまだ本当に子供だった。
ダンスの才能を見初められて、しばらくなかなか合格者の出なかったオーディションで、唯一合格した。
そして俺と時を同じくして練習生となった。
やはりあの時の審査員は見る目があったのだなと、改めて思う。
まだ何も知らないあどけない表情の少年は、とても努力家で、負けず嫌いで、他の誰にもない特別な何かを持っていて、めきめきとその芽を伸ばしていった。
彼には光る未来が見えた。
演出家のジェウォニヒョンは言った。
僕らの夢見るテボンーーと。
やがて彼は凛とした青年になり、ソロデビューとゆう道を手にした。
歌には自信がないと、クラスでも僕が歌うと笑われていたんだと、いつも言っていたのが嘘のようだ。
普段はふにゃふにゃしていて、一人にすると何をしでかすかわからないような青年が、ひとたびステージにあがると妖艶に歌い踊る。
彼には無限の可能性が秘められているのだと、ひしひしと感じた。
俺はそれが誇らしくもあり、巣の中で大事に育てていた雛鳥が巣立っていくような寂しさも感じていた。
俺は彼に約束していた。
またアルバムが出るときには俺が歌詞を書いてあげる。
彼の拓けていく道の上に、俺もほんの僅かに轍を残せたなら。