ゲームブック?
□汝は人狼なりや?
1日目 前半
気づくと俺はそこにいた。
周りには見知った顔。
しかし自分のいる場所には見覚えのない。
不思議に思っていると、起きたかという声が不意に聞こえた。
銀時「たっ、高杉…!?それに、辰馬も…」
高杉「ッチ、やっぱお前も何もわかんねーか」
その言葉通り、高杉も辰馬も何も知らないようで、俺と同じように、気づくとここにいたそうだ。
落ち着きを取り戻した俺はゆっくりと周りを見る。すると、自分と同じようにまだ寝ているのか、ヅラ、そして沖田が横たわっていた。
奥の方は、こちらを…いや、詳しくいうと高杉を警戒した土方が胡座をかいてタバコを吸っていた。
とりあえず俺はヅラを揺さぶりおこす。目を開けて寝るこいつは昔から気味が悪い。
桂「んんっ…ハッ!」
銀時「おせーよねぼすけ」
というか、奴らもこんな簡単に起こせるんだったら俺たちをもっと早くに起こしてやれよ。
どうして放置すんだ、おかげで腰がいてーや。
桂「ねぼすけとは…!銀時ッ、ここはどこだ!?一体どうなって…」
銀時「あーあー。んなの俺がしりてーよ。」
分かった。あいつらが俺らを起こさない理由。こうされるのが嫌だからだ。
パニック起こされてもどうしようもないし、困る。
その俺の気持ちを読み取ったのか、ヅラは喚くのをやめた。さっきの俺のように。
銀時「…土方、あと沖田くんだけだぞ」
土方「ほっとけば勝手に起きらぁ。」
…なんて奴。
とりあえず俺は辺りを見渡して、どこか抜け道がないか見回す。
ここは密室だった。今俺たちがいる一つの大きな部屋、そこに厠やシャワー室、それぞれの寝室など、簡素なものがくっついていた。キッチンはなかったが備え付けられている倉庫のようなものには何故こんなにもというほど食べ物が詰まっていた。
まるで、この部屋で何日も過ごせと言われているようで、嫌な気分だ。
…それにしても…。
俺はわかる。ヅラも土方も沖田くんも、拐おうと思えば手練れなら不可能ではない。
しかし、高杉や坂本。…こいつらは、何故。
俺でさえその時その時の居場所を掴めないというのに。
銀時「高杉らは昨日どこにいたんだよ」
そう聞くと、高杉は珍しく困ったような顔をして、覚えてねぇ、と呟いた。
坂本の方も記憶はないらしい。
確かに、自分の記憶を探って見ると、機能したこと以前に、今が何日なのか、春なのか夏なのか。そんなことさえも思い出せなくなっていた。
薬品の類いだろうか。
少し不安になってきた俺は、そろそろと沖田くんを揺する。
こいつはまだ若い。俺たちより、ずっと。
だから、何かあっては遅いと起こすことにした。
沖田「ん…あれぃ…、わたあめが見えらぁ、」
銀時「失礼なこと言うな」
沖田「ああ、旦那でしたかぃ。」
そう言って沖田くんは起き上がると、キョロキョロと辺りを見渡し、それ以上何も言わなかった。
銀時「随分余裕だな」
沖田「前にもこんなことありやしてね。ああ、でも誤解しないでくだせーよ土方さん。今回は俺じゃねーですから」
今回は、とは一体何なのだろう。
沖田くんに飲みを誘われたときは警戒した方がよいのかもしれない。
全員目覚め、これから一体どうするかと思ったところに、どこからか音声のようなものが聞こえてきた。
土方「何だ、この声は…」
全員がその声に集中する。それは何かを説明しているようだった。
『それでは、人狼ゲームを開始します。自分が死ぬ前に早く人狼を見つけましょう。役職は、狼2騎士1占い師1村人2…。黒の人狼が勝てば生き残った人狼の願いを叶えましょう。白の村人が勝てば今回の犠牲者を生き返らせましょう。だから、ほらー早く──最初の犠牲を────・・』
人狼?役職?犠牲?
さっぱりわからない。
だが、この中で沖田だけがどこか合点がいった表情をしていた。
それに気づいたのは他の奴らも一緒で、沖田に説明を求めた。
沖田「人狼ゲーム、なんて遊びがありやしてねぃ」
それは何とも、趣味の悪い遊戯だった。誰か1人を処刑し、夜に人狼が狩る。人狼を全滅させなければ、村人側は全滅する。
銀時「それを、やれと…」
くだらない。処刑なんて誰がやるか。
いつもならそう一蹴するところだった。
しかし、先程からの人ならざるもののがやったようにしか思えない現象。
どこか信じてしまう自分がいた。
それは周りの大多数も同じなようで。
土方「…役職とやらはもう持ってんだろ?さっき総悟が言った占い師なんかは名乗り出たほうがいい、信頼できるやつは知っときたいしな」
沖田「まあ、初日占いカミングアウトは普通ですしねぃ」
ルールを詳しく知っている沖田が話を進めていく。
自分はよくわからないが、占い師でも人狼でも騎士でもないのだろう。
だって俺は何も変わっていないのだから。
辰馬「あー、…よくわからんがおそらくわしじゃ。」
あまりにヘラヘラと、坂本は手をあげる。
そうか、辰馬が。
辰馬「わしが占い師じゃ。」
高杉「待て。」
俺も、占い師だ。
高杉のその言葉に、俺は心から面倒だと思うざるをえなかった。
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