聖花陽学園の日常
□7話
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「んっあーーっ…やっぱここは静かだと思ってたんだよねーっ」
俺は手をぐぃーっと伸ばして地面に寝っ転がる。ちなみに、荷物類はここに来る途中に寮に置いてきた。
森は好きだ。
特に夜の森が好きで、よく兄と一緒に星を見に行った。
そう、あの日は兄がいなくなるちょっと前のことだったな…
何十年ぶりかの流星群が見えると聞いた俺は、兄とともにいつもは行かない星がよく見える森の奥深くまでいったんだ。兄は片目に眼帯をつけていて、小さい俺は、それじゃ見づらいじゃん、と思っていたのだけど、兄は笑ってもう慣れたから普通に見えるって言うんだ。
そしてその後、兄が見ていない時に森の中の子リスを追いかけ俺はいつのまにか迷子になって、…で、その時空から大きな彗星が降ってきて…。
あれ、…それで、その後…
どうなったんだっけ…?
うーん。
…まぁ、いいか。
それより、この場所は本当素敵だな。
綺麗で、心地よくて…
…なんだか、さっきまで疲れてたから、
…ねむって、しまいそう…
…ぐー
・
「ふわぁー…。
…ん、んん…?」
眠りから覚めた俺は、目の前の不可解な光景を処理できずにいた。
…外で寝ていたはずなのに、なぜか自分が寝ているのはベッドの上だ。
もちろん、寮のではない。
というより、…そう、まるでホラー映画でフランケンシュタインや吸血鬼などが出てくるような洋館のような…
「って、…よ、洋館…?!
お、おおおお俺、怖いのは…ち、ちょっと……」
窓から見える景色は、月が浮かぶ闇夜で、館の恐ろしさを何倍にも引き上げている。…ああ、一度寝たらなかなか起きない自分の性格を恨む。
「…と、とととりあえず、、逃げなきゃ…!!」
俺は、その部屋のドアノブに手をかけた。…その時だ。
背後で、バサッという音が聞こえた。
月夜の光を受けて写りだされる目の前の影は大きな翼を持つ異形な存在の姿をかたどっていて、恐ろしくて振り向くことができない。
足が、震える。
「…ぁ、…来るな…ぁっ、」
小さい頃からお化けが苦手で、兄がいないとより1人で眠れないくらいだった。
さすがにいまはその時よりか克服しているのだが…本物に会うのは初めてだ。
ああ、もう、終わりだ…
しかし、そんな俺の心境と相反するように、おれの命乞いに答える声は明るく、軽いものだった。
「食べないから、こっち向いてヨ」
「…!?…
え、と…」
へらへらしたその声は、普通の人間の男の子のようで、意を決した俺はそーっと振り返る。
すると、そこにいたのは…
「久しぶ───」
「誰!?」
「え!?」
そこにいたのは、オレンジの髪を三つ編みにして垂らす、一般的に言う美男子だ。しかし、口からは牙が生えているし、背から俺1人包み込めそうなくらい大きなコウモリのような羽が生えている。
…確実に、お化けだ。
「〜〜〜っ!あ、あああ、っっ!
来るなっっ!!お化けーーっ」
「え、ちょっとちょっと、どうしたノ?!なんで俺のこと覚えてないの?」
…え、覚えてない?
…なんのことだ?
「…はぁー。ま、いいか。
…ねぇ、君、お名前は?」
え、な、名前?
「坂田銀時…だ、……?
あ、あの、えっと、…なんで、俺ここにいんの…?」
「外で寝てたから、連れてきちゃった!」
つ、連れてきた!?
ということは俺、やっぱり食べられ…!
…ってあれ?
身構える俺をよそに、
目の前の吸血鬼(?)はよそよそと何処からかテーブルを取り出し、そこに美味しそうな菓子と暖かい紅茶を並べた。
そして、椅子を二つ用意し、パチン、と指を鳴らす。
すると、テーブルと椅子、菓子はそのまま、俺と神威はさっきまでいたところとは違う別室に移動していた。
「し、瞬間移動!?」
「あはは、カワイイ♪
じゃあ、早く君も座って?」
みると、いつのまにか神威は先ほど用意した椅子に座って紅茶のカップを手に持っていた。
俺はいまだ状況をつかめずにいたが、魔法、というものに関しての免疫は一応ついていたのと、目の前の菓子の芳しい香りが我慢できないのとで、そーっと、椅子に腰掛けた。
「…紅茶、あったかい。…神威…さん?って、お化けなのに優しい人なんだ…じゃない。…ですね。」
見た目は自分より年下だが、とりあえず敬語で話しかけた。
「優しい?俺が?
っっ〜〜、あははははははっ!!
本当に、前のこと忘れてるんだ!」
え、なんでそんなに笑うんだ?!
俺変なこと言ったか?!
一応褒めたつもりなんだけど…
「え、えと、…さっきから言っている、忘れた、って…なんのこと…ですか?」
恐る恐る、神威に問う。
すると神威はにやにやと笑いながら、タメ口でいいよ、と言った。
いや、質問に答えてくれよ!!
はぐらかされると余計に気になる!
「あれ、納得いってない?」
銀「…そりゃそうでしょ…。というか、この際聞くけど、あんた何者!?なんで俺をここに連れてきたんだ!!」
さっきから気になってたことその二とその三だ。
…だが、この二つの問いに関しては、神威はあまりにあっさりと説明してくれた。
まあ、またもや、世の理をガン無視するような内容だったけど…