聖花陽学園の日常
□6話
1ページ/1ページ
1ーAのクラス。
確かに、制服とか教室は普通より綺麗で豪華だけど、これまでのいろいろを考えると、なんとなく、落ち着ける。
しかも、運が良く、周りの席には土方と沖田がいる。
なんでも、学級委員長である土方がおれのために采配してくれたらしい。
ちょっとだけ見なおした。
つか、この2人が同じ学年ということにも驚きを隠せないのだけれど…。
「お前、もっとしゃんとしないといびられるぞ。」
「おれ思考疲れしてんだよ〜…」
生徒会長のことも気になってしかたねぇし…
つか、いびられるって何?
怖いんだけどエリート…
いや、…なんか、本当に視線を感じるんだが…!
「まぁ、ここはAクラス。選ばれたものしか入れやせんからねぃ」
「はっ!?
なにそれ初耳!聞いてないんだけど!?」
ここって、いわゆる特別課ってこと!?
まぁ、土方と沖田は分かるよ、なんかどっちも美形だし雰囲気がA!って感じだもん。
…え、なんで、俺?いや、それは特待生だからなのか…?
つーか前から気になってたけど、そもそもなんで俺が特待生!?
「まぁ、ただの嫉妬だ。
それに、お前は綺麗だからな」
…はぁ?
いきなりなに言っちゃってんのこと人。電波?
「あ、いや…
髪とか、」
土方がめっちゃ動揺してこちらを見てくる。
「髪?誰にも彼にも染めたって言われるコレ?
お前変わってんな。
褒めてもらえたのは初めてだ!」
あの土方が適当にいったことだ、っておもってもなんだか嬉しくて、無意識に、口元が綻ぶ。
「っ!?…お、おう。
別に…」
「…ッチ
…銀時さん!俺も好きですぜ!」
「沖田くんもありがとな!
あ、あと、敬語は癖なのか?」
日頃気になっていたことをといてみる。
同い年なのに、少し子供っぽいところと敬語で喋ることが相まって、一個下ぐらいに思えちゃうし…
そういうキャラなのかな?
「敬語の方が、何かと都合がいいんでさぁ」
またまたにっこり笑っていう沖田。
うーん。深く探らないほうがいいなこれ。
…って感じで、色々雑談しながら、無事俺は午前中の授業を済ませた。
授業っていっても、初日だから勉強は明日から。今日は自己紹介とか学校の説明とかを聞いた。
まぁ、だいたいは土方から聞いてたし、なんとか理解できた。
そして、問題の午後。
「今日の午後は早速魔法の実践…と、行きたいところだが特待生の坂田くんがいるから復習から始めよう」
先生ピックアップしないでください視線が痛いです。
…でも、いよいよか。
そう思うと、意外と心はワクワクしてきた。
そして、始まるのは先生の長い説明なのだが…
まぁ、広い心で聴いてほしい。
「まず私達が使える魔法には、4つの属性がある。それは、火水風地だ。
それぞれには精霊が宿っており、火がサラマンダー、水がウンディーネ、風がシルフ、地がノームだ。」
ノーム、あの長い髪の男の人が言ってた…
「これらの名はとても重要だ。魔法を使うためにはこれらの名を呼ばねばならない。名を呼び、対象に神経を集中させることで魔法が使える。
…しかし、だ。あまり特殊な事例ではない限り、人が使える属性は、決まって1つだ。生まれつき、でな。」
属性は1つ?
俺は一体どれなんだろう…
「…早速試してみよう。
ここに花がある。坂田くんは4つの精霊の名を呼んでごらん。発動したものが君の属性だ。他のものは練習、お手本として、魔法を使うように」
え、早速…!?
ちょっとびっくりしたが、周りの人は皆淡々と進めるので、やはりこの学園では普通なのだと悟る。
「おい、大丈夫か?
花をよく見て、名を呼ぶんだ」
「お、おう…
あ、そういや、お前の属性は…?」
「見せてやるか?
…ウンディーネ、…水を」
土方がそう言うと、雨雲のようなものが花の上にでき、そして、ざぁぁーーっと花に振りかかる。
「土方さんは水魔法の扱いに関しては負け知らずなんでさぁ。」
沖田が、珍しく真剣な顔でいう。つまり、それぐらいすごいのだろう。確かに、周りにも水属性の使い手はいるが、土方のように雲にならず、ただ水が降っているだけだ。
それに、さっきの土方の顔は、ほとんど変化しておらず余裕さが溢れていた。
…もしかして土方はエリートのなかのエリートなのかもしれない
「水、の属性…。
つか、やっぱり魔法、、
本物だ…」
「今更何言ってんだ。ほら、やってみろ」
土方が急かし出す。
いつのまにか沖田くんも、周りの生徒もこちらを見ていて、緊張して仕方ない。しかも、さっきのあんなすごいのを見た後だと…
「えっと、…じゃあ、まず…
サラマンダー…!!」
…大声で叫んでみる。ちゃんと花に集中もした。
でも花に変化はない。
「…うーん。何も起きやせんねぃ。次は水試してみやしょう?」
「う、うん。
…ウンディーネ…っ」
二回目の挑戦
「…う。」
またもや
…変化なし
「……次こそ!!
ノーム!!」
早く周りの視線を落ち着かせたくて立て続けに叫ぶ。しかし、まだ何も起きない。
…まさか、最後まで残るとは。
でももう確実!
「し、シルフッッ!!」
…シーン。
何も、起きない。
「〜〜〜!」
「…ぎ、ぎんと───」
「…っ…っ…っぅ〜〜〜…!!
ばかばかばかばか!土方くんのばか!!ここにこれた人は絶対魔法が使えるって言ったくせに!!嘘つきー!嘘つき嘘つき嘘つき!!」
俺は恥ずかしさのあまり、土方に八つ当たりをしてしまう。
…嘘だ、嘘だ!
何も起きなかった…!
やっぱり俺がここの特待生なんて何かの間違いだったんだ。
そもそも、俺みたいなずっと普通貧乏に暮らしてきたやつがいきなり魔法を使うとかそんなファンタジーなことありえなかったんだぁぁぁ!!!
ざわざわ
「ねぇ、アレ、魔力なし…?」
「特待生なのに…?」
「なんかのコネか?」
「A組の恥じゃん」
「この学校にあれで入ったの?」
ざわざわ…
いやが応にも聞こえるささやき声。
言い方はあれだけど、実際全部そのまんまで否定なんてできない。
「ッチ…!
お前ら、銀時さんのことバカにしたら俺が黙────」
「はいはいはい。みんな静かに。坂田くんが神経を集中させれなかったかもしれないだろ。子供の頃からだと簡単だけど、今ぐらいだと難しいんだよ。ほら、だから静かに。」
そう、先生が諌める。
ありがたいけど、フォローされると、心苦しい。
だって、俺、精一杯鉢植えの花に集中したのに…
…その後の授業は全く頭に入らなかった。
放課後、俺は心配してくれる2人に礼を告げ、教室を出た。あのままだと、2人は部活があるのに、俺にずっとついてきそうだったから…
「はぁ…」
ため息をついて校内をふらふら歩くが、さすが小学校から高校まである大きな学園。こんなに広いのに放課後はどこもかしこも人がいる。
ただ、一箇所を覗いて。
俺は、土方に言われたことも忘れて森の奥へと向かってしまったのだった…