聖花陽学園の日常

□2話
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「っ、うわぁーーっ!!」

ぽん、と、飛行機から降りて徒歩10分。…大きめの島国にそびえ立っていたのは、校門の目の前から見ても、門の端が見えないほどの大きさの学園。

島の半分くらいは閉めてるんじゃないかというほど。

もしかしたら、この聖花陽学園って、…俺なんかにゃもったいない、エリート学園…!?

だからなのか、まるで西洋の国のように、校門に門兵がいた。

…恐る恐る、俺は例の証明書を門兵に渡す。…これで、帰れと言われたらどうしよう…

門兵たちが、紙を見てなにやら相談を始める。やっぱり、怖い。今になって騙されたんじゃないかと思う。

「あ、あの…」

「どうぞ」

「…え」

…??

呆気にとられている俺をよそに、門兵は入学証明書を俺の手に握らせる。
せかされた俺はおずおずと中に入った。

ガチャン。…背の方で門が閉まる音がした。

ああ、分からないことだらけだ。

「え、学園内に入っちゃったけど…。ど、どどどどうすれば…!?」

高等部に行くべき!?
でも…

目の前に広がるのは、まるで、お姫様が踊る城下町…

もちろん、下調べも何もなしにポンと、ここにきた俺には場所がわかるわけもなく…


「…どうしよう。そろそろ夜だよーー」

慌てて辺りをキョロキョロと見渡す。
…そうしたら、一つの看板を発見した。

「east、寮?」

右方向への矢印と、寮の文字。

寮って…ことは…

「と、泊まれる…!!
eastって、東?…よ、よくわかんないけど、矢印の方向の道があるっ」

急いで、その方向へ、走る。
ガラガラと、大きめのスーツケースが少し重くて、邪魔で、ちょっと時間がかかってしまった。

でも、丁度月が昇ってきた頃には、「寮」には着いたんだ。

でも


「現在、寮部屋、全て満室…!?」

扉にかけられた看板には、満室の文字。


確かに、寮は学校と比べてとても小さい。…あっても30部屋ぐらいだ。

エリートは、寮生活なんてしないのかな…

「もー。やだ…」

ぺたん。と、床にでも座り込みたくなる。もう、なんか、疲れた。

どうせ夜だから。

…誰も見ていないだろう。


俺は、寮の近くに広がっていた森に向かう。…勝手に入ってしまうのは気がひけるが、暖かそうだ。

どうせもう、門も、閉まってるだろう。

「なんなの、この学校…」

少し、いらいらしてくる。
…調べなかった俺も悪いけど、多分こんなエリート学園の情報なんてなさそうだし…

もうちょっと、優しくしてよ…!


俺は、仕方ないと、スーツケースとは別の肩からかけていたバッグからチョコを取り出す。

…空港で、なけなしのお金で買ったものだ。

「今日は野宿か…」

学園内で野宿なんて。
…いとおかし。

…お菓子は好きだけど。


…ぱきっと、チョコをかじる。
甘いものは大好きだ。
なぜかわからないけど、小さい時から、ずっと。

「…チョコはエネルギーあるから、…今日ぐらい、平気…」

地面に寝っ転がり、寝る体制に入る。
…森だから。雨降っても大丈夫そうだし、人にも気づかれないだろう。

ていうか、学園内にも森とか…

本当に、お金持ちな学園…。

…………

………

……



.


「…「東の森」で熟睡だなんて、物凄い子だな〜♪」

「…ん」

誰かの声が聞こえる。
…高めの男の子の声。

…目を開けたが、
さっきまで熟睡してたので、
まだ光に慣れない。

「それに。見たことない顔…。
新しく入った子かなぁ。
ああ、…楽しそう。
ねぇ、君の魔法、見せてみてよ」

「ん、あ、誰?
…魔法?そんなのあるわけ…」

ようやく目が慣れてきた。…ああ、そういやここは森だったか…

って、あれ…

男の子の、声は聞こえるけど…
姿は、見えない…

「誰、どこ…?」

少し、怖くなった俺は、早々にその男の子の姿を見つけようとする。

でも、笑い声が聞こえるだけ。

「ーーじゃあ、…比翼。
…行ってきて」

ひよく?…

「っっっ!?」

暗い森。…なのに、何故か空中に光るものが、ボウっと見える。
しかもそれは、ゆらゆらと揺らめいていて、まるで火の玉だ。

「じゃー、楽しんでネ。俺は遠くで見てるから、サヨナラ」

心底面白いとでもいうように、さっきから聞こえてくる声は笑う。

でも。…俺は、俺自身は恐怖の感情に溺れてしまいそうだった。
…これまで味わったこともない、今の現状。…足がすくんで、腰が抜けて動けない。

「ーーっ!?」

そんな中、さっきまで空中にとどまっていただけの火の玉が、片羽の鳥に姿を変えた。

そして、そのまま、物凄いスピードで、こっちに向かってくる。

「ひっ━━━━━━」

腕で顔を守るも、無駄であろう。

…ただ、身構えるしか、できない…


「っ、…ウンディーネ!!!」

「!?」

熱が体に伝わる直前、誰かの叫び声とともに、…水が、出現した。

物凄い量の水は、津波のように火の鳥へと襲いかかる。


…あまりに現実離れしたその状況に、俺は大口を開けてぽかーーんとしていたのだが、不意に腕を強く掴まれて、意識を取り戻した。

「おい!早く立て!
何してんだ!!」

「っ、お前は…?」

知らぬ間に目の前に立っていたのは、黒髪で、シャープな顔立ちをした、いかにも女にもてそうなイケメンだった…

…もしかして、助けてくれた…?

「…ッチ、早く走れ!
…寮はすぐそこだ!行くぞ」

「で、でも寮は閉まって…」

「そんなこと気にしてる場合か!」

ビシッと、怒鳴りつけられながら、俺は寮へ向かって走った。
未だに右手はこの口の悪いイケメンに掴まれているし、俺の頭も混乱状態だ。

だが、走り続けていればいずれ寮に着く。

バァンと、黒髪が大きな音をたて扉を開けた。そして、掴まれている右手とともに、中に引き入れられる。

盛大に尻餅をついたが、その頃にはもう不気味な森も、片羽の火の鳥も見えなくなっていた。

ただ、…走っている最中に再び聞こえた、あの笑い声だけが、心残りだが…

「…はぁ、はぁ…」

スーツケースも引きずって走ったので、息が切れた。
喉も渇いた。

…でも、そんな弱々しい気持ちもよそに、目の前に未だ仁王立ちしている男は、ギロギロとこちらを睨んでいる。…ああ、今にも血管が切れそうだ。

「テメッ━━━━」

「あり、土方さんでしたか。
夜中に騒ぐとうるさいですぜ?」

怒号が飛ぶか、…そう思った時、寮の二階から1人の男が降りてきた。
童顔で、オネーサマにもてそうな、可愛い系わんこ男子だ。
明るい茶色の髪で、目の色は俺と一緒。…でも、なんだか不気味なオーラがみえるような…

「ああ、沖田か…」

「どうしたんですかぃ、土方さ…
…ん、あなたは誰ですかぃ?」

「えと、…坂田、銀時…デス?
高等部に、新しく入るんだけど…」

そう言うと、2人…

沖田と土方は、心底驚いたような顔をする。

「転入、ですかぃ」

「だから東の森に…
…あー、メンドクセェ」

「なっ、!?」

初対面に失礼じゃんっ!

抗議しようとしたが、ビシッと土方に人差し指で顔をさされてできなかった。

「とにかく、今日は俺達の部屋で寝ろ。…大体のことは明日、分かる」

「ま、その後補足の説明もしてあげまさぁ。よろしくですぜ、銀時さん。」

「よ、よろしく!…?」

土方と違って、沖田…?は、いい人そうだ!

…それにしても、明日諸々の説明?
いったいこの学園、どんなトンデモがあるんだ…?

いや、
というか、

もう、
そんなことより…

疲れたから、
早く…
寝たい…!




「あ、ちなみにーーーー…って」

「…爆睡だな、…」

「初々しくて可愛いですねぃ」

「…悩みの種が増えた」

「ふーん、余裕ですねぃ。」

「オイ、それより早くこいつ運ぶぞ。明日は忙しいんだ」

「へーへー」

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