銀色は何色に

□5話
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「よろしく」



ある、真選組屯所内の一室。

そこには、

局長、副長、一番隊隊長

…という、TOP3が揃っていた。

ただ、土方と近藤は真剣に話してるのに対して沖田は心ここに在らずという状態でいつものアイマスク姿で壁に寄りかかって寝ていた。

その様子に土方は若干の憤りを感じていたが、いつものことなのでスルーして近藤と話していた。

その時。

前方のドアからノックする音が聞こえ、隊士…、山崎が入ってきた。

「…失礼します。

…局長、ちょっと…」

近藤に耳打ちをし始める山崎。

「…何、あの2人が!
そうか、そうか!
わかった直ぐに向かおう!」

「では、俺はこれで。」

山崎がいそいそと部屋から出て行く。

「トシ、総悟!
あの2人が帰ってきたぞ!」

「2人って…」

「…え、まさか…、?

…そんな…」

その後、しばらくのやり取りの後、近藤率いる3人は、例の「2人」が待っている部屋に向かった。

沖田の場合はとてもイヤイヤだったが。




そして、

その様子を見つめる1人の少年。

「…?」

銀は、その微かな好奇心に負け、

例の3人の後ろについて行ったのだった…




「邪魔するぞ。」

ドアが開く音が静かな部屋に響く。


…だが、この静寂はすぐに破られることになるのだった…


「何、ガンつけてるんだヨ、

殺されたいアルかドエスコノヤローッ!!」

部屋で待機してたと思われる赤髪の少女が沖田に向かって飛び蹴りを発する

「ちょ、神楽ちゃん!!
何してんのぉぉ!」

また、その横にいたと思われる地味めの眼鏡の少年が止めようとする。

「けっ、会って早々それとはひでぇじゃねーか。
…ま、俺のがひでぇんだけどねぃ!」

そう言って沖田は何処からかバズーカを取り出し神楽に向ける。

「そ、総悟おおおお!何する気だてめぇぇぇっ!」

「何です?文句あんならあんたが死にやすかぃ?」

堪らず怒鳴った土方に沖田はバズーカの銃口を向ける。

「な、殺す気かっっっ!!!」

「殺す気ですけど、
何か問題でも??」

「けっ、私もやる気満々ネっ!!!」

「だ、ダメだって神楽ちゃん!」

4人の叫びが小さな部屋に響き、心なしか壁がきしむ音が聞こえる。



…もう、状況的には近藤が止めるしかあるまい。

多分。

…だが近藤は近藤だ。

時にはいいところを見せる彼だが、こういう時に役に立ったことはない。

…無理なものは無理である。

「えーっと…おーい、
皆ぁー? 聞いてー!」

若干涙目の近藤が止めようと頑張るが、沖田らの声に全て掻き消え、まとめることはできない。

このまま無茶苦茶で終わってしまうか?…そう思われた瞬間。

誰かの血管が切れる音が聞こえた。

「い…い…

いい加減にしろヨークシャテリァァァァァァァァ!」



「全く。あのままじゃ話が進まないよ。…ね、2人とも」

にっこり笑うその表情は、どこか恐ろしい。それは、あまり怒らないように見えるこの少年だからなのか、それとも…。

兎にも角にも、その少年の制止により、真選組内は平穏を取り戻した。

「じ、じゃあ!
…気を取り直して…───」

…志村新八。

真選組二番隊隊長。

…神楽。

真選組特別隊隊長。

今更であるが、今日帰ってきた2人とは、勿論、この2人のことである。

ちなみにこの2人、
見た目に似合わずなかなかの強さを持っていて、神楽なんかは体術に関しては真選組最強レベルだ。

「えー、
よく無事に帰ってきてくれた。
本当は2人も休みたいところだろうが、話を聞かせてもらえないだろうか?」

「はい。」
「わかったアル!」

「有難い。

では、単刀直入に言う。

…高杉の行動、様子はどうだった。」

「……」
土方が静かに白煙を吐く。


…二番隊隊長 、
そして特別隊隊長の仕事とは、

高杉の侵入捜査 であった。


少し詳しく言うと、高杉の鬼兵隊に忍び込み、情報を手に入れるというものだ。

「下っ端だったし、
あまり思うように動けなかったアルから、目覚ましい情報は無かったネ」

「そうか…、いや、無事に帰ってくれただけでいい。」



「…ただ…」

「ただ?」

「…誰かを探しているみたいでした。…恐らく、高杉達と同じ頃の同志。下にも伝わるほど派手に動いているみたいです」

「高杉が探す青年ってことですかぃ…」

「でも、そのおかげで目立たずにすんだヨ。あと、この行動を起こしている最中は、攘夷は起きないかもしれないアル。他に手もつけないぐらい必死だったネ」

「情報が足りないが、洗ってみるか。そこまで必死だと不安でもあるからな。」

「…よし!
志村くん、チャイナさん!有難うな!」

「別にそんなお礼なんていらないネ。わたしは置いといて、
こいつがクソ地味でやりやすかっただけアル。
この程度、ミントンにもできたヨ」

「神楽ちゃん、酷くないかな、
それ…」

引きつった顔で新八がツッコむ。

「じゃあ、これからは通常通りで宜しくな!」

「はいヨー」

「分かりました。」

これにて解散。
…と、なるはずだったのだが、


不意にガタッと、扉が動く音が聞こえた。

一斉に5人の視線が扉付近に集中する。

最初は、攘夷志士のスパイだと思った5人だったが…

「…あ。」

その考えはすぐに訂正された。


「えっ…と。」

なぜなら

そこに立っていたのは、
申し訳なさそうに固まっている
銀髪の少年だったから…



「こ、子供アルかぁ!?」
「ちょっと、誰ですこの子!」

テンプレのように驚く2人。

「…話すと長くなるんだが…」

それに同じくテンプレで返した土方は、かくかくしかじかと経緯を説明した。



「…そんなことが…」

「ああ、そういう訳だ。」

「……」

土方が、簡易的灰皿でタバコの火を消した。

「大変だったアルねぇー、よちよち」

神楽が銀を持ち上げる

「よし、私がこの子を育て上げてみせるアル! よろしくネ、"銀楽"」

「ぎ、ぎんらく!?
ちょっと、お姉さん、俺は─────!」

銀がみずから神楽の発言を否定しようとしたが、突如の目線の変化により、遮られた。

目線が落ち着くと、そこは、
沖田の腕の中だった。

「なっ…!

銀楽を返すアル!!」

「銀楽じゃねぇ!"銀"だこの大食い娘っ!
…それに銀はお前にも土方さんにも渡さねぇ。
俺が育てて俺が愛でるんでさぁッ!」

「お前、へんたいアルかぁぁ!」

と、またもや神楽と沖田の喧嘩、

そして銀の取り合いが起きている横では…


「それにしても、あの子、綺麗ですね。沖田さんが可愛がるのも、分かります。」

「…ああ。

銀は本当に可愛いどこが可愛いかは言い切れないほど可愛いが容姿でいうと、一にあのふわふわの銀髪だな男なのに白い肌も綺麗だそしてそこに映えるあの赤い果実のような瞳がまた──」

「ちょ、土方さん!?」

「トシ、大丈夫かぁぁーっ?!」



「ホアチャァアーッ!」

「うぉぉぉおおおっっっ!!!」


…その頃、2人の喧嘩は発展に発展し、もはや目に見えないほどとなっていた。

安全なとこに避難され、
沖田にも神楽にも「応援してね」
と言われてしまった銀は、

新たな家族の2人のことをぼーっと考えていた。

そしておもむろに立ち上がると、
「しんぱち…、かぐら…?」

と、2人の名前を呼んだ。

「はい?」
「銀ちゃん、何アルか?」

新八がこっちを見、神楽もピタと動きを止める。

「…よろしく…ね!」

少し不安そうに、銀は笑った。



すると2人はしゃがみ、銀と同じ目線にも立つと銀の小さな手を握った。

「こちらこそ、

よろしくね(アル)、ぎん(ちゃん)!」


にっこりと笑いかけてくれた2人に、不安そうだった銀の顔も和らいで心からの笑顔が現れる。

「っち、」
「……」
「…良かったな。」

銀の世界に現れた2人の隊長。
これからこの2人によって
どのように未来が変わっていくかはまだ。誰も知らないのです。

〜まぁ、変わらないかもしれないけど…
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