This is love.B

□This is love.B
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薄暗いこの部屋の中観葉植物や壁にかけられたポスター、大きな棚にたくさん並べられた音楽雑誌やDVD、CDラックなどの見慣れた景色を横目にチャニョルが弾くギターの心地いい音色に耳を傾け、耳の奥がくすぶられるようなぞくぞくした気持ちの良い何かを感じる。


ベッキョンは、チャニョルと次の現場へと向かう間の移動時間に昔ほどではないけれどたえず冗談を言って笑い合ったり、たまの休日にここへ来てゲームをしたり映画鑑賞なんかしてすごすのが好きだ。
だけれどこうして時々2人でしんみりとした雰囲気のある夜をすごすのだって本当に居心地が良い。
ただその変わりしんみりとすごす夜、チャニョルはきまってあまり喋らない。

だから自然とベッキョンだけが喋ってずっとチャニョルが話を聞きつづけるような傍からみれば不可思議な状況にはなるものの、お互いの間には相変わらず落ち着いた空気がながれているし、それでいてしっとりとしている体がふわふわと軽くなるような感覚があって、あたたかなこの部屋の中自然と身を任せる事が出来て居心地の良いものがあった。

そしてこの空間、それはまぎれもなくなくチャニョルでなければ作る事はできない。


「 やっぱり 俺お前のギター本当好きだわ 」

「 けどお前が弾くのっていつも切ない感じがするんだよな
それに 耳の奥ってのかな ...鼓膜?? くすぶってきてぞくぞくする 」


そして今日もまた、その空間の中1人話し続ける。


「 ............、あ そういえば俺彼女できたんだ

俺ずっと前から狙ってたろ? あのグループのソユンって子

この前も言ったと思うけどダンスも歌も上手だし スタイルも良いし 可愛いしさぁ
なによりほんと優しくて一途で俺のタイプなんだよなあ〜


俺がソユンに告白した時
ソユンも俺の事結構気になってくれてたみたいで」

「 この前なんて
おそろいのマフラーもらっちゃって
みろよこれ 可愛くね? 」

「 だから俺もなにかおそろいのものやれたら良いんだけど
なにやれば良いんだろうな〜 」

「 最初ペアリングとかネックレスが良いかなって思ってたんだけど
まだ気もはやっ... 」

『 ベク 』

それは急に止まった心地の良いギターの音色のかわりにベッキョンの話を遮って耳の奥へ飛び込んで来たいつもよりトーンの低いチャニョルの声。
チャニョルが咥えていたピックはいつの間にか弦とネックの間に挟まれている。

そして先ほどまでギターの弦に視線を落とし、普段と違って必要以上に口を開かないでいたチャニョルの視線はいまや一直線に俺の目をとらえている。
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