ド・ギョンスが気付いた3つの事
□1つ目に気付いた事
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『 俺 ...気になる奴が居る 』
チャニョルがソレを唐突に言ったのはもう随分昔の事だった。
「 ん? それって相談?
...それとも独り言? 」
「 相談 」
exoとしての活動が一段落ついたその日の晩、俺はホテルの一室でスーツケースを相手に忙しなく動いていた。
あすの朝早くにここを出ないといけない俺達は、悠長にしている暇なんて無ければ、その日あった仕事の余韻に浸る事さえできない。
なのに同じ空間に居るこの大きな男はベッドに大の字になってその体を預けていたものだから、あすの朝泣きつかれても構う事なくここを出て行こうと考えていた。
けれど、余韻に浸っている筈のこの男はらしくもなく少し深刻な表情を浮かべながら天井を見詰め、独り言なのか相談なのかぽつりと呟く。
そうしてチャニョルは、はぁーっと大きく聞こえよがしな溜息をもらした。
それがわざとでは無く、
心の、そして身体の奥底から出たものだという事は直ぐに解る。
わざとらしい仕草だが、それを意図せずやってしまう、それがパク・チャニョルという人間だからだ。
「 なんだかチャニョルらしくないね
聞かせて ? 」
そうして好奇心にくすぐられてしまった俺は相談話の続きが気になって、つい自然と手を止め口を開いていた。
「 ...俺 気になる奴がいるんだよ
... いいや
...気になるってか好きなやつが居んだわ
....気付いた時にはもう好きになっててさ
... 今すぐにでもアイツにこの気持ち伝えたくて仕方ないんだけど
この気持ちは絶対に伝えちゃいけなくてさ 」
「 ...絶対 ?? 」
「 そう 絶対
...だから叶わない恋なんて俺自身を滅ぼすだけだって事は解ってるんだけど
アイツの事好きになっちゃいけないって思ったり
嫌いになろうとすればするほど好きになってさ
もう俺... 本当に
...本当にどうすりゃ良いのかわかんなくて 」
「 ははッ
ほんとチャニョルらしくないね
チャニョルは自分の気持ちとか率直に伝えるタイプだとおもってたけど
...チャニョルは
そのアイツさんのどこが好きなの?? 」
チャニョルが'"アイツ"の話をする表情はどこかで何度か見た事があった。
例えば幼い子供が母親に駄目だと言われても駄々をこねてオモチャを欲しがるような、目の前に欲しい物があるのになかなか手に入れる事ができないような。
そんな表情。
「 ハハ 好きなとこなんて無いに等しいよ
嫌いな所の方が多い
でもアイツと笑いあってるとさ
理屈なんて無しに好きだなって思うんだ
...これ絶対アイツに似合うなとか
これアイツ好きだろうなとか
もう気付いたらずっとアイツの事ばっかり考えてたりして
今日だってステージに立ってる間は忘れる事ができたのに
今はこの様 」
「 ハハハ 重症みたいだね
じゃあ
どうしてそんなアイツさんに惚れてるのに気持ちを伝える事ができないの??
さっきも絶対に伝える事はできないって言い切ってたしさ
チャニョルはもっと恋に盲目だった気もするけど 」
言葉通りチャニョルはいままで恋に対してとても盲目だった。
例えるなら、世間一般はジャンプをする為にホップとステップをするのに、チャニョルはしっかり屈んでジャンプをする。