◆小説◆

□《凄腕の証明》
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本当のプロは店にバレない。

しかし、その境界を知るためにあえて際どい実験をすることがある。

どこまでなら許されるのか。
それを知ることは重要だ。

それが「旅打ち」である。
もう二度と来ることのない土地で試すのだ。




私はとある土地で銭形平次を打っていた。

当時の京楽はワンツー打法が有効であった。
大当り中1玉多く入れる打法だ。
1ヵ月約80万円余分に儲かる計算だ。

普通はこの程度。
しかし、私は更に高みを目指す。

時短中も、さらに通常時もやる。
ここまでやるプロはまずいない。

しかも私の打法はひねらないので全くわからない。

ちなみに、この行為はスロの目押しと同じで合法だ。




「お客様!」

ついに私は店長から声をかけられた。


「あの……程々にして頂けると有難いのですが……」

店長は困惑している。

それもそのはず。
ずっと後ろで見ていたのに、どこも怪しくないからだ。

私はどう怒られるのか楽しみだった。



「実はですね、警報が鳴ってまして」

警報?

「150を超えて…」




ほう!

なるほど!


つまり、ホルコンだ。
ホルコンが警報を鳴らしたのだ。

どんなに上手いプロでも割数が110を超えることはない。
警報は140に設定されている。
普通有り得ない数字だ。

それが150を超えたと言うのだ!

事務所は大騒ぎに。

しかし打っているのは普通の女性。
ワンツーは確かにやっているようだが、監視していてもわからない。

だから困惑しているのだ。

「警報が鳴るなんて初めてで……」

この店は特にひねり打ちを禁止しているわけではない。
だからもし騒がれると店も困るのだ。



困らせるつもりはない。
境界実験は終わった。

私はニッコリ笑って言った。
「帰ります。」

店長は慌てて
「いえ、続けて下さい! ただ、程々に、としか……」
と、汗だくだ。

でも私は流して帰った。



気分爽快だった。

ホルコンが認めてくれたのだ。
私を「凄腕」だと。

ごめんね店長。




おしまい



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