短編夢

□眠れぬ夜に
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夜の帳が下りて聞こえるのは波の音だけ。
エリーは展望室の窓辺のベンチに腰掛けて海を見ていた。

月明かりが柔らかい。星も空一面密かに瞬いて居る。


「きれい...」

エリーは自然と零した。

秋島の近くだからだろうか、空気が冷たくて毛布を持って来るんだったとエリーは少し後悔した。




誰かが梯子を上って来る音がして、誰だろう?とエリーは少しビクッとした。



「先客が居たとはなァ 眠れねェのか?エリー」

ゾロだった。

暗い室内でエリーを見つけるとゾロは頭を掻いてそう言った。


「うん ゾロも眠れないの?」

エリーはベンチに座ったまま膝を抱えて顔を傾げてゾロに聞く。


そんなエリーの昼間とは違って大人っぽい姿にゾロは唾を飲んだ。


「お...おう 眠れねェからトレーニングでもしようと思ったんだけどよ」

そう言ってエリーの隣に腰掛けた。


エリーは何だか緊張した。ゾロは昼間寝てる事が多くて口数も少ないし、話しかけてもぶっきらぼうな返事しか返って来ない。
それでもエリーはゾロに対して他の仲間とは違った感情を抱いていた。


「ねぇゾロ 今日星綺麗だね」

他愛もない言葉にゾロは、おーとかそうだな、とかいつもの返事が返って来る。


そして静寂。

エリーはこんな時間がずっと続けば良いのにと内心思っていた。


「エリー お前はコックが好きなのか?」

突然のゾロの問いかけにエリーは心臓が止まるかと思った。


「へ?何でそんな事...」

「いや 悪ィ 忘れてくれ」


忘れられるわけが無い。
暗闇の所為なのか夜の所為なのかわからないがエリーは思い切って言ってみた。

「あたしはどっちかって言うと...ゾロのがタイプだな」

人差し指で頬を掻きながらゾロの方をチラッと向けば、暗闇ながらもゾロの顔の赤さがわかるようで、それに伴ってエリーは心臓が破裂しそうだった。



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