ヒロアカ夢

□ヒーロー5
2ページ/2ページ

授業後




もらった個性なんだ…





うるせぇ!こっからだ!こっから俺は一番になってやる!






「若いねぇ〜。」





ちょうど帰り際に二人のやり取りを目撃してしまった私は、ついポロリとこの言葉が口から出てしまった。
青い春とかいて青春。まさにその言葉がぴったりだ。




見かけは15歳頭脳は三十路な私にはデク君の真っ直ぐさも、爆豪君の自尊心も懐かしかった。






(私にもあんな頃があったなぁ〜。)






しみじみとした気分で感傷に浸っていたのだが






「お前も同じ歳だろ。」






「!!?」






突然の声に反応できず固まっていると轟君が不思議そうに私をみていた。





「だからお前も同じ歳だろ。」






どうやら私が聞こえなかったと思ったらしく、彼は律儀にもう一度同じことを言ってくれた。






「いや、まぁ確かにそうなんだけどね。」





何とも歯切れの悪い返答をする私に、
まぁ当たり前だけど俺も同じ歳だよな。何て言いながら轟君が私の目の前までやって来て





「名字は電車なのか?」






これまたいきなり私の通学手段を聞いてきた。






「うん、私は電車だよ。轟君も電車?」




轟君は私の質問に短くあぁと答える。通学手段が一緒とはなんたる幸運!と神様に手を合わせた。そして





「それじゃあ一緒に駅まで帰らない?」





この流れで誘ってみると彼は表情を変えずさらりと言った。




「あぁ、どの道目的地は一緒だからな。」





私は彼のオッケーの返事に内心ガッツポーズをする。
そんなわけで轟君と一緒に帰ることになったのだった。







チラリチラリ。






出来るだけ見ないようにはしているのだけれど、今私の横にはあの轟君がいるのだ。
しかも二人だけで下校。なんて美味しいシチュエーションなんだ。




イケメンの轟君が私の隣。こんな機会なかなかないと思うとついつい轟君の横顔を見たい、見てしまうのは仕方のないことだ。しかしあまりにも度が越していたようで





「俺の顔に何かついてるか?」





突如轟君が私に質問する。





「!!?いや、ついてないよ。」





焦りながらも何とか答えたが






「そうか。だがさっきから名字、俺の顔を何度も見てくるからさ。」






「いや、それはその…」





轟君の直球の質問にどう答えようかたじたじになっていると






フッ





いきなり轟君が笑ったのである。
突然のことに私は更に動揺が増すが.対照的に轟君は少し楽しそうだ。






「えっ、何?私何か面白いことしたかな?」





轟君の笑った顔を見れたのはすごくすごく嬉しかったが、如何せん理由がわからないから納得できない。
理由を聞いてみると思いもかけない言葉が飛んできた。




「とても今朝爆豪と言い合いしてたり、訓練で俺たちのチームに勝利した時と同一人物には見えねぇと思ってな。」





「へっ?」





意味がわからないと言った感じでポカンとする私をよそに轟君は言葉を続ける。





「名字って大人しそうな奴かと思えば、爆豪にケンカ売ったりサポート系の個性だって自分で言ってる割りには最前線に自ら出てくるし、本当におかしな奴だと思って。」






なんじゃそりゃあ。誉められているのかよくわからない評価だ。
しかも聞き捨てならないことを言っている。




「ちょっと待って!私は爆豪君にケンカなんか売ったつもりはないんだけれど。」





私は口を尖らせて轟君に異議申し立てしたが




「お前からしたらそうかもしれないが、俺たちからしたらわざと爆豪を怒らしたように見えたぞ。」





「いやまっ、確かに私も頭に来てたところはあるよ。だってあいさつしただけなのに、何気安く声かけてやがるなんて因縁つけられてムッとしない人の方が少ないよね。」





私の必死の言い分に轟君は同意する。





「確かにあれはひどいな。」






「でしょ。だけれど同じ土俵に降りちゃいけないと思って、努めて冷静にこれからもクラスメイトとしていい付き合いができるように話し合おうとしたんだけれどなぁ。」





「だが結果としてお前の言葉で爆豪はどんどん怒りを増していっただろ。」





「うっ…」



痛いところを突かれた。確かにどんなに弁を立てようと爆豪君をキレさせたのは紛れもない事実だ。


ぶっちゃけ確かに自分でも少々自覚がある。私も頭に来てたから、わざと相手がムカつくであろう言葉を選んだところがなきにしもあらずだ。





(お昼にもみんなに言われたなぁ…)





実はお昼ご飯の時にも飯田君やお茶子ちゃん、デク君にヒヤヒヤしたと注意されたっけ。





「でもあの場でまさか説教するとはな。それでもってさっきの若いねぇ発言ってお前本当に俺らとタメかよ。」





そこで轟君が笑った訳がやっとわかり、私は半ばヤケになりながら





「おばさんくさくて悪うございました!」





そう吐き捨てると轟君は至って真面目に答えてくれた。





「いや、どちらかと言うとお母さんだよな。」





そうです。私は皆さんからしたらずっと年上の女なんです!だからどんなに頑張っても仕方ないです。と心の中で叫んでみる。



例えて言うならば昔はクレヨンしんちゃんを見てしんちゃん目線だったのに、いつしかミサエやヒロシ視点になっているのと同じことなんです。
どんなにがんばっても、一度ミサエひろし視点になった者が、しんちゃん視点に戻ろうとするのは難しいんです。



そんなことを心の中で叫んでいると、落ち込んでいる私に気付いたのか轟君が励ましてくれた。





「まぁそれだけお前が大人びててしっかりしてるってことだろ。少なくとも俺はお前のことそう思っている。」





がっくしうなだれていた私だったが、現金なもので轟君の言葉で瞬時に回復した。




(轟君とまた一歩近づけただけで幸せだよね!)


前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ