ぬらりくらり

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「おや?そのような縁があるとは初耳じゃ!
何も聞かされておらん」
「そうか」
「だが、ぬらりひょんが花開院に来ても絶対に飯は食わすなという謎の言伝てがあるくらいだ」
「ハハハ!」
ぬらりひょんは突然笑いだす。
「…?」
「ハハハ!
そんな言伝てを残したのは是光じゃな」
「はい?」
「花開院の13代目当主の兄だった花開院是光じゃ
あやつは珱姫の護衛を担当していたからな」
「そうでしたか!」
「是光は当主の秀元とは違い堅物じゃったからな
花開院に飯を食いに行ったのは数回だけだと言うのに…」
「総大将…それが原因だろう
だからあの者は後世に言伝てしたのだろ
総大将が親しかったのは13代目当主のみだったはず」
牛鬼はぬらりひょんに言った。
「そうじゃな」





















ぬらりひょんと幹部妖怪たちは陽菜の部屋を出てぬらりひょんの部屋に向かった。
今の段階の情報共有が目的だ。
花開院秀元が防音の結界を施し会話を始めた。
「魑魅魍魎の主
お主のあの手紙の言葉が事実だとすれば今の花開院では脆すぎる…
敗北が目に見えている」
「当時の13代目秀元のような能力のある者がいないということか?」
「そうだ…
花開院の当主は羽衣狐を倒すために必要な破軍が使えることが絶対条件である
しかしその羽衣狐の呪いで本家の男児は短命なのだ…
血を絶やさんと分家から才ある者を本家の養子にして今まで続いている家系なのだ
才ある者がいたとしても羽衣狐の本格的な復活までに更に力を得ることができるかと言われると微妙じゃろう」
「そうか…」
「それに今いる陰陽師の中でもっとも才ある見込みのあるのは先程の陽菜ちゃんと同じくらいの年齢のまだまだ幼い陰陽師の卵の子供たちがほとんどなのだ…
狐の復活までにその子らがどこまで成長することができるか期待することしかわしにはできん…
わしかて弱くはないつもりじゃが…敵をよくは知らぬ」
「文献などでしか羽衣狐を語り継がれていないからとかか?」
「その通りだ」
「奴良組も花開院も課題がてんこ盛りか…
うちの組は戦力の要だった二代目だった息子を亡くして日が浅い…
隠居の身だったわしが総大将として今は代理で率いている状態じゃ
後継者はわしの血を4分の1は引き継いでいる孫娘の陽菜とその双子の弟であるリクオという孫のどちらかしかいないのでな」
「そうでしたか…」
「じゃが…あの事件で一部の能力の覚醒が始まった陽菜とは違いリクオはまだ覚醒の兆しすらない状況じゃ
戦力を揃える時間が果たしてどれだけあるかが焦点になるのぅ」
「そうでしょうな」
「そういえば、確か京都には13代目が施した結界があった気がするがどうなんじゃ?」
ぬらりひょんはあることを思い出して問う。
「それは13代目の螺旋の封印のことですな」
「それだ!
当時、奴から簡単にその結界の話は聞いているがどこまで通用するんじゃ?」
「8箇所の封印を螺旋を描くようにひとつひとつ破らなければ羽衣狐ですらそう簡単には悪さはできん」
「そうか」
「その封印の結界は今のところ何百年と破かれてはおらん」
「そうか
じゃが…いつかは京妖怪が動き出すはずじゃ
羽衣狐は復活してしまっているからのぅ」
「そうでしょうな」
「我々は本来なら協力体制が取れるような関係ではない
今回の陽菜のことで花開院の陰陽師を頼ったことは異例じゃ…
それにわしの独断じゃ
まぁ少しはここにおる幹部連中に相談はしたがのぅ
ただ宿敵が同じ者同士というだけの関係じゃ
お前さんは正直どう思っているのじゃ?」
ぬらりひょんと幹部妖怪たちは秀元を見る。
「確かに…
本来の陰陽師としての立場としてなら妖怪の血を引く子供なんかを助ける義理などない」
「まぁそうじゃろうな」
「だが、宿敵が絡んでいることが分かりわしはこうしてここを訪れたことは理解してもらいたい
ここだけの話になるが…実は当主のみに受け継がれる文献の中にかつての京都での羽衣狐との戦いを13代目が記したものがある」
「なんと!?」
「秀元の奴…そんなもんを残したのか…」
そんなものが存在することに奴良組は驚いた。
「後の世に語り継ぐ方法としてのぅ
そこにはぬらりひょん率いる奴良組が加勢していたことが書き残されている
どうやって羽衣狐を倒したかの方法も書かれた文献だ
そのこともあり少しでも当時を知る妖怪から宿敵の情報を得られないかと思いここを訪れたのだ」
「そうか」
「魑魅魍魎の主
些細なことでも構わんから羽衣狐に関することをお話頂きたいのだが?」
「わしも詳しいことはあまり知らん
じゃが、あの女狐は何かを産み出そうとしていたことは知っておる」
「!?」
「そのためには力ある姫や女の生き肝を羽衣狐や京妖怪たちは集めていた
生き肝信仰らしくてな」
「生き肝信仰ですか…」
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