ぬらりくらり

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ぬらりひょんは体調が良さそうなうちに陽菜からあの日に鯉伴と何があったのかを改めて聞くことにした。

「体調はどうかのぅ?」
『けほっ…』
「大丈夫か?」
『うん…ちょっと…けほっ…せきが…でちゃうけど…きょうは…まだいいほうだよ』
「そうか…」
元から体が弱いからなのか目が覚めてから咳ばかりしている。
「陽菜…辛いかもしれんが…
あの日…鯉伴と何があったんじゃ?」
『…うん…さんぽのかえりに…あのじんじゃに…いったの
リクオだけ…さきにいっちゃったけど…わたしは…おとうさんと…ゆっくりあるいて…じんじゃにいったの
ついたら…リクオが…おんなのこと…あそんでいたの』
「女の子?
確かにリクオがそんなことを言っておったな」
『わたしもそのこと…あそんだの
でも…』
「でも?」
『おとうさんが…おんなのこを…みたとき…ちょっとおかしかったの』
「おかしい?」
『うん…
しんじられないって…かおしたの
でもすぐに…いっしょにあそんでたから…きのせいだったのかな…?』
「その子はどんな子じゃった?」
『うーん…くろいかみに…くろのワンピース…だったかな?
くろかった…ことしか…おぼえてないよ』
「そうか…それで?」
『あのじんじゃに…きいろのおはながあって…おとうさんにきいたら…やまぶきって…いうんだよって…おしえてもらったの』
「(山吹じゃと!?)…鯉伴はそれを見て何か言っておらんかったか?」
『あっ!…ななえ…なんとか…かなしき…っていってた』
「っ!?(やはりか…)
七重八重、花は咲けども山吹の実のひとつだになきぞ悲しき」
『それ!』
「そうか…」
『それってなに?』
「お前さんにはまだ意味を知るには難しいことじゃ…
そうか…鯉伴はまだ…」
『むずかしいの?』
「昔…鯉伴にはちょっと悲しい出来事があってな…
皆がその話を鯉伴の前ではしないようにしてきた…
鯉伴自身がその過去を乗り越えて若菜さんと出会い結ばれ陽菜とリクオを授かった」
『なにかあったの?
おとうさんが…つらいこと…あったの?』
「今でもその話をしないようにしてきたのは若菜さんや陽菜たちのためじゃ
まぁ…若菜さんはちゃんと鯉伴からそれは聞いているし分かった上で一緒になったがのぅ」
『おじいちゃん…おとうさんに…なにがあったの?けほっけほっ…きいちゃダメなはなし?』
「陽菜…」
『おしえて!
もしかしたら…かんけいある…かもしれないの』
「どういうことじゃ!?陽菜」
『おとうさん…やまぶきをみながら…そのことばのあとに…おんなのこを…みながら…まるで…おれたちの…むすめみたいだって…いってたの』
「本当か!?それは!?」
『うん』
「(だから鯉伴に隙ができた…
もしかしたらその女の子があの者に似た子供じゃった…)」
ぬらりひょんは何となくだがこの先何が起きたのか見えてきた気がした。
「陽菜がすべてを理解するのは難しいかもしれんが…
それでも聞きたいかのぅ?」
『うん』
「分かった…もう何百年前になるか鯉伴には妖怪の妻がいた
だが…なかなか二人の間には子供ができず…その者は鯉伴の前から突然…いなくなったのじゃ」
『どうして?そのひとは…いなくなっちゃったの?』
「子供ができないのは自分のせいじゃと責めてしまったのじゃよ」
『かわいそう…』
「その者はある言葉と山吹を鯉伴に残しいなくなった…
すべての原因はわしのせいじゃというのに…酷なことをしてしまった…
鯉伴にもその者にも…」
『どうして?おじいちゃんの…せいになるの?』
「わしが昔に受けてしまった呪いのせいじゃ…あの二人を引き裂いたのは…
呪いのあの言葉の本当の意味に気付けたのは鯉伴たちのことが分かった後じゃった…」
『おじいちゃん…つらい?
つらいなら…そのはなしを…もうはなさなくて…いいよ?』
「陽菜…大丈夫じゃ!」
『ほんとに?』
「ああ…
それよりあの日の話に戻すがその後はどうしたんじゃ?」
『リクオがすこし…はなれたところに…なにかをみつけたのか…おとうさんから…はなれたの
わたしはおとうさんとおんなのこと…やまぶきをみてたの
おとうさんがあのことばをいったときに…リクオがもどってくるあしおとがして…おとうさんがふりかえったの
そしたら…おんなのこが…かたなを…だしてきたの』
「刀を?」
『おとうさんが…おとうさんが』
陽菜が震えだした。
「辛いんなら言わんでいい…」
『ひっく…ひっく…』
ぬらりひょんは背中を撫でる。
『おんなのこが…ひっくっおとうさんに…はしってきて…かたなが…おとうさんを…さして…わたし…おんなのこのてをおさえようとしたの』
「危ないことを…」
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