ぬらりくらり

□3
1ページ/3ページ

陽菜の出血はなんとか止まったが脈が弱くなんとかかろうじて生きているような状態であった。
昏睡状態で生死の境をさ迷っていた。
『ここ…どこ…?』
陽菜は暗い水辺を歩いていた。
「それ以上は行ってはいけませんよ」
『ほぇ?だれ?』
女性に声を掛けられた。
「それ以上行けばもう戻れなくなってしまうわ」
『だあれ?』
「私は珱姫、あなたの祖母です」
『おばあちゃんなの?』
「ええ…だいぶ前に亡くなっているから貴女が知らなくても仕方ないのです」
陽菜は祖母だという若い女性を見る。
桜色の着物に桜の模様がある着物を着た女性だった。
『おばあちゃんがここにいるなら…ここは…』
「あの世の入口と言えばいいかもしれません
私はここでずっと妖様を待っているのです」
『あやかしさま?』
「貴女の祖父であるぬらりひょん様ですよ」
『おじいちゃんを…ずっとおばあちゃんはここでまってるの?』
「ええ…人と妖では寿命が違う
それを分かっていながら一緒になったので後悔はしていません」
『おばあちゃん…わたしは…しんじゃったの?』
「いえ…まだ現世に留まっているので死んではいないから安心して下さい」
『じゃあなんで…ここに?』
「なんとか生きていますが体はダメージが大きいので休息を必要としたのでしょう
生死をさ迷っているのです…」
『そうなんだ…』
「父親の鯉伴が命懸けで守った命です
どうか大切にして下さいね陽菜」
『おばあちゃん…わたしね…
おとうさんをたすけられなかった…
あんなゆめまでみてたのに…』
「そうですか…
夢とは時に現実を時には嘘や幻を見せます
例えそれが見えてもどうすることもできない時もあると娘が昔に言っていました」
『え?』
「今から何百年も昔のことです
私が亡くなって少しして鯉伴の妹である桃花という娘が亡くなりました
桃花は貴女のような予知夢を時々見ることがありました」
『おとうさんのいもうと?』
「誰も教えてくれませんでしたか?」
『うん…あっでも…
はるになると…にわのもものはなをおじいちゃんとおとうさんとかかなしそうにみてるのはかんけいあるの?』
「庭の桃は桃花が亡くなってからあの子を忘れないようにと妖様が植えたのです
庭の桜も私の為にと妖様が」
『にわのさくらはおばあちゃんなんだね
ごめんなさいです…
リクオがさくらのきをつかってようかいたちによくいたずらするです…』
「知らないのですから仕方ないですよ」
『ねぇおばあちゃん』
「なんですか?」
『なくなったおとうさんのいもうとさんはいまはどうしているの?』
「すでにこの川を渡りあの世に旅立っています
現世で新たな命に生まれ変わっています」
『そうなんだ』
「亡くなってしまった鯉伴は半妖の里に眠っています
魂の一部はここにいます」
『え?これおとうさんなの?』
女性は赤ん坊を抱いていてそれを陽菜に見せてくれた。
「ええ…この子と共に妖様をここからその時が来るまでこの現世を見せてくれる水辺で見守っています
陽菜のことも見守ってますよ」
『おばあちゃん…』
「貴女はそろそろ戻った方がいいですね」
『でも…どうしたらもどれるのかな?』
「大丈夫です」
ピカッ
光が現れた。
『え?ひかり?』
「それを頼りにこの道を進みなさい!
いいですか!1度も振り向かず光だけを頼りに進みなさい
そうすれば戻れます」
『わかった!いろいろありがとう!
おばあちゃん!』
「貴女とこうして話ができて嬉しかったです
陽菜…これから辛いことがたくさんあるかもしれませんが一生懸命生きて下さい
貴女は奴良組を照らすお日様の光のように皆を照らす暖かな安らぎを与える存在でいて下さい」
『おひさま?』
「妖怪たちは夜が主に活動時間ですから昼間は休みますからそんな彼らに安らぎを与える人になって欲しい
貴女の名前には鯉伴のそういう願いが込められて名付けられたのです」
『うん!がんばる!
ありがとうおばあちゃん!』
「頑張って下さいね」
陽菜は珱姫に手を振り光に導かれ歩いて行った。
「貴女は陽菜として新たに命を授かり歩き始めた
また奴良組に生まれたことは運命なのでしょうか…それとも誰かの意図があるのかは分かりませんが…
桃花…
いつか生前の貴女が愛した方にまた巡り会えることを願っています」
珱姫は歩いて行く孫娘の陽菜を見ながらそう呟いた。
次へ
前の章へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ