そして神は微笑んだ
□水に住む紅き花
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〜Y〜
「どういう…事だ?」
クーアが言った一言に、レンは動揺を隠せない。
それもそうであろう。傷ついた神をその身に宿している本人が、クリスの
状態を知らないと言うのだから。
クーアは言ってから後悔したのか、自嘲気味な笑みをその顔に浮かべた。
「…あの後、何度も話しかけたけど、何も返事が返ってこないんだ。俺の呼
びかけにも応じないなんて、この短い期間だけだが初めてだよ」
クーアにはそのつもりが無くとも、自然にレンを責める様な台詞が口から
零れる。
クーア自身は言葉を選んだはずだったが、加害者のレンにはその気遣いす
らも心に刺さった。鋭く尖った、言葉の刃が。
「すまない…。本当に反省している……」
「大丈夫だ、レンのせいなんかじゃないさ。…クリスだって、いずれこの時
が来ると解っていたはずなんだから」
宥める様に優しく声をかける。
――レンだって、ワザと言ったわけじゃないだろう?ましてや、こんな事
態になるだなんて、誰も予想していなかっただろうし。
「だが…そうは言っても、俺が傷つけたことには変わりないんだ…っ!」
パンッ!
乾いた音がその場に響いた。レンの頬には、赤い手形が残っている。
クーアがレンの頬を叩いたのだ。
「クリスからビジョンが視えたとき、一緒にクリスの声も聴こえた。…『い
たい。くるしい。もうそれ以上僕の過ちをつれてこないで』…って。さっき