そして神は微笑んだ

□水に住む紅き花
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 初めは禁忌を口にしたかのような弱々しい口調も、話の最後になるにつれ、
堂々たる態度に変化していく。
 流石は一国の王とでも言うべきか。俺様な台詞がよく似合う。
 そのせいかクーアはすぐにでもOKを出してしまいそうになった。レンの
周りのオーラに負けそうになったのだ。
 それでも言葉を飲み込み、ゆっくりと違う言葉を発する。

「でも、レンは国の王じゃないか。助けてくれるのは凄く嬉しいけど…国の
ほうは大丈夫なのか?」

 国を統べる者がいなくなってしまうのではないか。クーアが発した言葉は
こういうことだった。
 一つの国には王が一人。通常の国ではこれが一般的だ。
 稀に双子で国を統一しているとか、王女と共に国を護る、などという国も
あるが、しかしそれも珍しい存在。そう簡単に見つかるほど、この世界には
そのような王達がいないのだ。
 それでは、王がいなくなったらこの先どうなっていくのか。
 否、王がいない国はどうなってしまうのか。
 王がいなくなれば、国を統一する者がいなくなる。国民を従える権利を持
つものがいなくなる。護る者がいなくなった国を襲う反逆者達も急増するだ
ろうし、それを抑える役目すらもなくなるだろう。そして他国との連絡手段
も途絶え、最終的には国の存亡も危うくなる。
 つまり、『王がいない』というのは、それまで保っていた均衡を崩すよう
なものなのだ。
 それなのにレンは、さらりと国を殺すような言葉を吐いた。
 一体、どういうつもりなのだろうか。

「俺は、王でありながら王ではない存在だから」
「は?」

 突然の話に驚きを隠せないクーア。レンはそのまま続けた。

「俺は名前だけの王だ。アイラーン王国の国王を継ぐ者は、代々王家の長男
ということになっている。だが、俺は民を統べる力を持たなかった。その能
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