そして神は微笑んだ

□水に住む紅き花
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も言ったよな、クリスは自分が魔物を生み出す原因になってしまったことを
解っていた。だから当然、魔物を生み出した神が悪く言われるのも知
っていた…」

 レンは黙ってクーアの話を聞いている。
 外から聞こえるはずの鳥のさえずりも、今はまったく聞こえない。場の流
れを読んで、歌うのを止めたのかも知れない。集中しすぎて、ただ聞こえな
いだけかも知れない。
 それくらいこの場の空気は張り詰めていた。

「だから、それ以上弱虫みたいに自分を追い込むな。レンは王なんだろう?
今のレンは…昔の俺、そのものだ…」
「クーア…?」

 クーアの表情が、一瞬歪んだ。レンはその影に気付くも、クーアの言葉の
最後が濁ったのを聞いたためか、追求することができない。
 そしてクーアの顔も戻ってしまった。いつもの、少し勝気な瞳に。

「…それにな、俺に謝られても困るんだ。俺は、レンの謝りたいと思ってい
るクリスじゃないし、まだ神なんて名乗れるほど凄く地位が高いわけでも、
凄く偉いわけでもない。謝るのなら、クリスが立ち直って外へ出てきてから、
ゆっくりと話してくれよ」

 クーアが微笑むと、レンの表情も幾分か柔らかくなった。だがその顔に残
る硬さは健在で、そこにあり続けている。

「…なぁ」
「何?」

 レンがクーアを訊ねた。さっきよりも大きな声で、でも小さな声でクーア
に話を持ちかける。

「…お前の旅に、俺も連れて行ってくれないか?俺の調べている手がかりも
あるかもしれないし、…その…命を救って貰った礼くらいはできると思うん
だ。それに、クリスとも…ちゃんと向き合って謝りたい」
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