そして神は微笑んだ

□過去と未来、囚われた歯車
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  〜T〜


「お兄様、もう一冊ご本読んでくださいませんか?」
「今読み終わったばかりじゃないか…。元気だなぁ、リエルは」
「だって私、お兄様にご本読んでもらうの大好きなんですもの!」

 ラーズバード家の三女リエルは、同じくラーズバード家の長男クーアにも
う一冊本を読んでと催促している。
 まったく本に興味を見せないラーズバード家の中で、一体誰に似たのだろ
うか。
 恐らくこの長男クーア。
 リエルと一番仲が良く、そして親よりもいっしょに遊んでいる。クーアは
いつもリエルを部屋に連れて来ては、毎日本を読んで聞かせ一人だけでも文
学に興味を持たせようと必死になっていた。
 今ではその努力が実になったのだが、クーアへ毎日本を読めと催促するよ
うになってしまった。リエルはこう毎日来ても疲れてなどいないが、クーア
の方まさか毎日何時間も拘束させられるとは思っていなかったようで、かな
りぐったりしている。

「お褒めいただいて光栄だけど、ちょっと疲れちゃったんだ。少し休ませて
もらえないかな」
「わかりましたわ。でも明日も絶対ご本を読んで下さいね?」
「うん。絶対、だね」

 そしてこれも毎日の事。リエルも毎日このような会話が出るとわかってい
るはずだ。だからこそ、この交換条件を出しているに違いない。
 クーアは優しく微笑むと、リエルを自分の部屋から帰させた。
 リエルが部屋から出て行くと、クーアは自分のベッドに寝転んだ。先程ま
でリエルに読んであげていた本を持ちながら。

「しかし…まさかあそこまで本が好きになるとは思わなかった。これだって、
いくら絵本とはいえ原作が歴史書なんだぞ…?」
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