神授国騒動記
□6話
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自分の部屋であるのだから当然ノックなしに入ってきたシェルは呆れたようにやや引き攣った表情を浮かべていた。
「・・・ノックもなしに部屋に入ってくるなんて感心しませんね」
「俺の部屋だろうが」
邪魔された為か少し含みを込めたレイの言葉にシェルはややだったのが完全に引き攣った顔になってしまった。
そんな2人が軽く睨みあっているとシェルの後ろからひょっこり顔を出したマナが場の空気を読まずに明るい表情を見せた。
「おはよう、アキ。良く眠れた?」
「おはようございます。マナさ・・ま・・?」
シェルとレイのやり取りをこちらもシェルとは違った意味で顔を引き攣らせていたアキはマナの顔を見てころっと態度を瞬時に変えて嬉しそうなものにした。
しかし、そのマナの姿をよくよく確認してみて次第に目を見開いていき、その名前を呼ぶ声も小さくなっていった。
「マナ様・・・その髪・・・それに、目・・・」
「ああ・・これは・・」
アキにシェルの部屋を使わせていたため、シェルとマナは昨夜はレイの部屋を使わせてもらったのだ。
ちなみにレイは一晩中アキにつきっきりだったため自分の部屋にも邸にも度っていない。
ともかくそのレイの部屋からここに来るまでの間に当然廊下を歩く必要がある。
そうなると必然的にマナは自分の髪と瞳の色をレイから貰った薬で変化させる必要があり、現在その髪の色も瞳の色も黒色へと変化している。
それは最早マナ本人やシェル達にはお馴染みとなった姿である。
しかしアキにとってはこのマナの姿を見るのはこれが初めてである。
よって・・・・・
「マナ様の、マナ様の髪と瞳が〜〜〜〜!」
激しくパニックを起こしてしまった。
「あ、アキ・・・?」
そのアキの狼狽振りにマナはおろおろとし、にらみ合っていたシェルとレイも驚いてそちらに反射的に目をやった。
「アキくん?」
「ま、マナ様の・・マナ様の髪と瞳があんな、あんな・・・なんで、どうして・・・あの海のように美しい青い髪と、エメラルドよりも輝き澄んだ緑の瞳が・・・なんで、なんで・・・」
主の異常事態を目の前にその混乱は中々とまりそうにもない。
「アキく・・おちつ」
「いったい、なにが・・・だれがこんな・・・」
宥めようとするレイの言葉などまったく耳に入っていないようで、ますます主を思ってのパニックは酷くなっていっている気がした。